58 / 95

A:3-1

まさか、あの遊佐が独占欲らしきものを見せてくるなんて。彼女もセフレも飽きたらポイするようなやつが、ただのセフレである俺ごときに感情的になっていて驚いた。嫉妬のような、独占欲のような感情をぶつけられて、なんだか遊佐が可愛く思えてきて、本当に俺は救いようがない。 彼方に付けられたキスマーク。 遊佐には絶対にバレるだろうと覚悟していたけど……あんなに怒るとは思ってなかった。あの感じだと、自分のセフレに手を出されたからってだけじゃない気がする。でも遊佐にとって俺は、ただのセフレのはずなのに。噛まれた背中がひりひりして痛い。 犯人を聞かれたとき彼方の名前を出していたら、きっと歯形を残されただけじゃ済まなかっただろうな。まじであのまま喰われてたかも。ボロボロになるまでヤられたかもしれない。 男だからやり過ぎても大丈夫だと思われていたのには本気で呆れた。女子より体の作りが丈夫なのは確かだけど、俺だって生きてるし乱暴に扱われたらそれなりに痛いし傷つく。 でも俺が男じゃなかったら、遊佐とのセックスに耐えきれなくて関係をここまで続けてこなかったかもしれない。……いや、女子が相手だったらさすがに優しくするか。遊佐はそういうところはちゃんとしてそうだ。 さっき咄嗟に彼方の――『弟』のことなんて知らないと言ってしまったけど、遊佐が本当のことを知った時が怖い。知り合ったら彼方のことを気に入るんじゃないかと言われた時はドキッとしたし、キスマークの犯人を聞いてくる度にバレるんじゃないかって内心ビクビクしていた。 双子だから『弟だなんて気づかなかった』なんて言い訳は通用しない。実際に彼方のことを遊佐だと勘違いして声をかけたのは俺だ。自分から関係を隠すことを望んだ彼方が俺の話をするとは思えないから、俺が言わない限り遊佐は本当のことを知ることはないだろう。 面識は無いと言った時の遊佐の安心した表情を見て、彼方のお願いとはいえ嘘をついた罪悪感と申し訳なさがあった。 俺と彼方の関係をいつまで隠せるか分からない。嘘をついていたとバレたら一体どうなってしまうんだろう。二人の仲が良いのかよく分からないけど、俺のせいで悪くなったら嫌だな。本当は正直に言ってしまった方が今後のためにも良いんだろう。でも彼方との約束を破るつもりもない。 ……遊佐が俺と彼方を引き合わせたくないなら、本当のことを教えなければ遊佐の中ではずっと、俺と彼方は知り合いじゃないってことになる、よな……? 「……せっかく家まで来たんだし、どうせヤるんだろ?」 彼方のことで嘘をついたお詫びとして。 いつもと違う、レアな姿を見せてくれたお礼も少しだけ兼ねて。 これ以上キスマークに触れられるとボロが出そうだから別の話題に変えたかったのもあって、今日は俺から誘ってみた。いつも遊佐から誘ってくるくせに今日はヤらないつもりだったらしいけど、腕を回して引き寄せたらその気になってくれたみたいだった。ちゃんと下も反応してる。 背中だけだったキスマークを胸や脇腹にも優しく付けられてくすぐったくて笑ってしまうと、遊佐も付けながら楽しそうに笑っていた。そして、俺の腹に痕を残しながらながら『俺以外の誰にも付けさせないでね』って拗ねていたのがさらに可愛くて、そういう感情を俺に向けてくれるのが少し嬉しかった。 『最高に優しくする』と宣言した通り、がっついてくることなくいつも以上に甘い前戯を施された。前戯に時間をかけられたことなんてあまりないから、すぐにドロドロに溶けて何も考えられなくなった。 「遊佐、お願い、もう入れて……」 「っ、だめ、まだキツいって。優しくするって言ったでしょ」 「やだ、入れてっ。ねぇ、はやく……!物足んない!」 指じゃ届かないところに欲しくて、その次を必死になってせがむ。 雑に扱われたら扱われたで不満になるくせに、優しくされたらそうされたで物足りなくて不満になる。俺って超めんどくさいな。 「ああもう、クソっ……お前、ほんとに……」 「んっ、ぁあッ……!遊佐!ゆさっ!」 「はぁ……っ、キツ……」 正面から抱きしめ合って遊佐が俺のナカを割って入ってくる。何度やっても痛くてなかなか慣れないけど、この瞬間が一番好きだった。繋がってる、って感じがするから。ちゃんと遊佐が俺のナカにいるって感じられるから。 今この家には彼方がいる。いつ二階に上がってくるか分からない。背徳感と罪悪感と、よく分からない感情がごちゃごちゃになって、もう止まれなかった。

ともだちにシェアしよう!