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鏡越しの姿じゃなくて、こうして向き合ってみるとよく分かる。意思の強そうな目とか、すっと通った鼻梁とか、見た目はハルの好みを全部詰め込んだ感じの子だ。ということは俺の好みでもある。それに、この子前にも会ったことあるような……。 ろくに彼の話も聞かず生返事をしながら、いつどこでだったか思い出そうとぼーっとする頭を働かせていると、いつの間にかすぐ目の前にその子がいた。ほんの少し身を乗り出せば唇が触れてしまうくらい、近いところに。 「もしかして、体調悪い?大丈夫か?」 心配そうに首を傾げて聞いてくるのは無意識なんだろうか。ワイシャツの隙間から見えてしまった白い肌には、さっきのハルとの情事でつけられたらしい痕跡がはっきりと残っていた。また熱が上がった気がするけど、これはきっと目の前にいる彼のせいだ。 もしかしたらハルが散々喚いていたのは、彼が理由なのかも。見た目だけじゃなくて恐らく性格もハル好みだ。ほんと、俺たち双子ってこういう好みだけはよく似てる。 彼の質問に大丈夫だと答えたら疑うような視線を向けられた。 「いやいや、大丈夫じゃねぇだろ。早く帰って休んだ方が良いって。歩ける?肩かそうか?」 全身で心配してくれてるのが伝わってくる。でも、その相手は俺じゃなくてあくまでハルだ。あんな節操なしのどこがいいんだか。毎日違う女子を部屋に連れ込んでいるような、そんな奴なのに。 ああ、思い出した。彼は八重夏希くんだ。この前ハルの部屋で寝てたのを覚えてる。あの時もきっと抱かれた後だったんだろう。 あまり他人の話をしないハルが彼の話をする時だけはいつも楽しそうで、ハルにこんな表情をさせるなんてどんな子なんだろうと思っていた。 あのハルが、珍しく執着を見せている相手。 一体どんな子なんだろう。 そう思ったら彼への興味が強くなった。 もっと彼に近づきたい。彼と仲良くなりたい。 どうやったら彼は俺を見てくれる? 何を言えば彼は俺の方に傾いてくれる? どうすれば彼は振り向いてくれる? どうしてこんなに気になるのか、自分でも不思議だった。普段の俺だったら、ハルに関わりがある人間ってだけで毛嫌いするのに。 校舎もクラスも授業も違う。俺と彼に共通するのはハルと関係があるってことだけ。こうやって彼と一対一で話すのはこれが最後かもしれない。だったらやることは一つ。 「……歩ける、けど…………家には、帰りたくない」 「ああ、嫌いなカテキョーが来るんだっけ?……なら、俺ん家来る?その人が帰るまで休んでればいい」 あと数分でいいから彼と話がしたいと思って言った言葉だったけど、思いがけないことに彼の家に行けることになったらしい。騙しているようで良心が痛まない訳ではなかったけど、今回ばかりは彼が勘違いしてくれていて良かった。 お礼を言って立ち上がるとひどい目眩がした。最近あまり寝られてないからかな。倒れるかと思ったら彼が支えてくれた。 俺の意識はそこで途切れた。

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