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寝て起きたら夏希がいなくなってた。らしくもなく抱きしめて寝たはずなのにベッドには俺一人で、夏希が寝ていたはずの場所はもう冷たくなっていた。脱ぎ散らかした服も俺のしかなくて、この部屋に夏希がいたという痕跡は一つも残ってなかった。 相手――しかも夏希――が俺を置いていくという、いつもとは逆のパターンに何とも言えない気持ちになる。俺のセフレって、いつもこんな気持ちだったのか。 「くそ……なんなのあいつ……。一言声かけてから帰れよ……」 今日は一日かけてめちゃくちゃヤろうと思ってたのに、相手に帰られてしまったら何もできないだろ。しかも一発しかヤってないから全然足りない。 文句の一つでも言ってやろうとスマホを手に取る。トークにメッセージを打とうとして、ふと昨日カナに言われたことを思い出した。カナが言うように俺って文句言える立場じゃない、よな……。本当に“いまさら”って感じ。今までのツケが回ってきた気分だ。 とっくに消えた夏希の温もりを探すように寝返りをうつ。あいつが寝ていた場所に、ほんの少し残り香を嗅ぎ付けた。汗でシーツに移ったんだろう。 そこに鼻を埋めて息を吸うと、すぐそばに夏希がいるみたいだった。あいつの体はもちろん、匂いも俺のお気に入りだ。……もしかして俺は、あいつの全部を気に入ってるんだろうか。 「まじ……男同士で、とか……おかしいだろ……」 いつもテキトーに遊んだり飽きたらすぐ乗り換えたりで遊び相手には困ってなかった俺が、まさか男相手にこんなにのめり込むなんて思ってもみなかった。 ……あれ?……もしかして、夏希が相手だからじゃなくて、『男が相手』ってところに魅力を感じてるんじゃないか?男同士のセックスとか夏希が初めてだったし、想像してたのより何倍もヨかったから勘違いしてるだけなんじゃないか? ……うん、そうだ。きっとそうに違いない。 どれだけヤっても子供ができる心配もないし、女より体が丈夫だから激しいプレイだってできるし、同性を組敷くことでそれなりの支配欲とかも満たされるし……。準備がめんどくさいことを除けば、けっこう満足できるし。男とヤる理由がそれなら、夏希が相手じゃなくちゃいけないってわけじゃない。あいつにこだわる必要なんてないよな?他のやつに取られたくないって思うのも、男のセフレがあいつ一人だから、だろ?うん、そうに違いない。 なんだ、そんなことだったらあいつの他にも男のセフレ作っちゃえばいいじゃん。女のセフレみたいに数人いれば、あいつのせいで悩むこともなくなるだろ。 「ふふふ、さすが俺!」 舞い降りてきたナイスアイデアに浮かれていると、ふとあることに気づいた。 ……そもそも男のセフレってどうやって作るんだ? 夏希とはほぼ成り行きで始まったけど……、男同士ってことに抵抗あるやつの方が多くないか? 「……まあ、どうにかなるか」 これで、らしくもなく悩むこともなくなるんだ。さっさと他のやつ見つけて切り替えよう。あいつも俺に振り回されることがなくなるし、俺だってあいつの他にも相性がいいやつはいるはず。メリットだらけだ。

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