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B:2-3
ゆっくり昼飯を食べ終えてカナの使った食器も洗って、リビングのソファーに寝転んだ。腹も満たされてだらだら過ごす午後は最高……だけど、眠いわけでもないし特にやることもないから暇だ。セフレでも呼び出そうと思ったけど、三大欲求の一つが満たされたからかそんな気分じゃなくなっていた。
こんなに暑ければ出かける気も起きない。俺ってそこまでアウトドア派じゃないから、夜ならいいけど暑い日中は冷房の効いた部屋にいたいタイプだし。友達からの遊びの誘いも気が向けば行くくらいだ。それに比べて、時間の使い方が上手いカナは朝から図書館に行ったり午後は勉強会に出かけたり……なんか、夏休み初っ端からカナの方が充実してないか。
「俺も、伊折でも誘って俺も勉強会しようかなー……」
一緒に課題をやればすぐ終わりそうだ。忙しくなければ俺の暇潰しに付き合ってくれるだろう。とりあえずダメ元で聞いてみるか。
起き上がってスマホを手に取り伊折にメッセージを送る。意外にもすぐ既読がついて返事の代わりに電話がかかってきた。
『勉強会しよう、なんて急にどうしたんだ』
「暇なんだもん。勉強会なら伊折ものってくれるかなーと思って」
『今日はこれから手伝い頼まれてるから無理だな。……また今年もバイトで入ってくれてもいいんだぞ?叔母さんたちが『今年は遊佐くん来ないのー?』って言ってた』
「そっかぁ……。わかった、バイト考えとく。する気になったら連絡するね。お手伝い頑張ってねー」
『おー、またな』
伊折はそう言って通話をあっさり切った。親友くんはやっぱり今年も親の実家の手伝いに駆り出されるらしい。アプリを開いたついでに、女子たちからのお誘いメッセージにテキトーに断りの返事をしてまたソファーに身を沈めた。
伊折も駄目だし、今日はもう一日家でごろごろしていよう。
点けっぱなしにしていたテレビからは今期月曜ドラマの再放送が流れ始めた。タイトルだけは聞いたことある。最近いろいろな番組で見かけるアイドルと売れっ子俳優が主演の恋愛モノらしい。
少し強引なところもあるけど頼れる先輩と、いつも支えてくれる優しい後輩が、後輩の同級生である女を取り合うという三角関係で、女はどっちつかずの態度を取って二人からの告白の返事を先伸ばしにしてるらしい。
どっちと付き合うのかさっさと決めればいいのに、どっちも傷つけたくないとか言って自分に良くしてくれる男たちをキープしておきたいだけだろ。二人の間で揺れる恋心、っていうテーマらしいけど、俺、こういうはっきりしない女キライだわ……。少女漫画に出てくるようなキラキラふわふわしてるか弱い『ザ・女の子』って感じの子よりは、自立した大人の女性が好み。セフレや彼女に求めるのも『後腐れない関係』だし……ってそれとこれとは違うか。
そんなことを考えていたらドラマの中の三人ははいつの間にか修羅場になっていた。まだ一話なのに……展開早すぎだろ。
「三角関係も大変だねぇ……」
なぜか思い浮かんだのはカナと夏希の顔。いやいや、おかしいじゃんね?二人の間に面識があるわけでもないから三角関係になってすらいないし。しかも、あいつに執着するのは止めようって決意したばかりだろ。
……でも、なんでか分からないけどカナにはあいつを取られたくない、なんて思ってしまう。カナをライバル視してるみたいだ。それってなんかなぁ……自分がライバルみたいでヤだな。
万が一、何か奇跡的なことが起こってドラマみたいに三角関係になったら……。
まあ、それはそれで面白いかもしれないけど、やっぱりカナにだけは取られたくないな。
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