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結局、初回から先週話までがっつり見てしまった。主人公の女は相変わらずだったけど、男たちには多少共感できた。終始カナと夏希の顔が脳裏にちらついていたことにイライラを感じつつ、ニュースに切り替わったテレビを消した。 時刻はとっくに夕方になっていて、そろそろカナが夕飯の支度を始める頃だ……って、ああ、そういえばいないんだっけ……。夕飯、どうしようかな。自分で作れなくもないけど、作るのもめんどくさい。 何か夕飯になりそうなものはないか冷蔵庫を開けてみたけど、調理をせずに食べられるものといえばカナの買ってきたスイーツくらいだった。俺はカナみたく甘党じゃないから、夕飯に甘いものはちょっといただけないなぁ……。 「……はぁ、コンビニ行ってこよ」 財布とスマホを持って、日が陰って少し暑さがやわらいだ外に出る。犬の散歩をしてるおばさんや幼稚園帰りの子供とすれ違って、今朝も寄ったコンビニに着いた。冷房の効いた店内でテキトーにパンを買って、やたらと上目遣いに俺を見てくる女店員に微笑んで店を出る。 じわじわ出てくる汗が不快で早足で家に帰った。近所のコンビニに行ってきただけなのに湿気と汗で肌がベタベタする。夕飯の前に先にシャワーを浴びてこよう。天気予報でも言ってたし、今夜雨が降るかもなぁ。蒸し暑いのイヤなんだけど。 ……雨降ったら、カナ帰って来れるのかな。 友達の家がどこにあるのか知らないけど、こんな時間まで勉強してるなんて一緒にやってるやつも優等生なんだろう。その友達とやらも特進科だったりして。校舎も授業も違う特進科のことなんてよく分からないから、普段カナが誰と一緒にいるのか知らない。いつも俺の教室に来るときは一人だし、弁当派のカナを食堂や購買で見かけることもない。誰と仲が良いとか友達とはどんな共通点があるのかとか、全く知らなかった。 それに比べてカナは、俺の交友関係を結構細かいところまで把握している。まあ、フった子や元カノという流れ弾が自分に当たらないように警戒してるのかもしれないけど。夏希が俺のセフレだということもとっくに知られてる。あの日夏希が寝ていたところを目撃されてるし、俺もらしくなくカナに夏希の話を何度もしてしまったし。 まあセフレといい彼女といい、カナにとって俺とヤってるやつは面倒事の種という認識らしいから、セフレである夏希にちょっかいを出すことはないだろう。そのままの認識でいてくれた方が俺としては好都合だ。他の男のセフレを見つけるまでは夏希に頑張ってもらわないといけないから、とりあえずそれまではカナに取られたくない。 ……なんて思ってるけど、もし他に男のセフレが見つかってカナが夏希を構いだしたら、俺は何の躊躇いもなく夏希を諦められるのかな。……カナにだけじゃない。お気に入りのあいつを、俺の知らないやつに、はいどうぞって素直に渡せる? 「ああ、もう……うざ……」 ぬるいシャワーを頭から被ってため息をつく。 なんでセフレのせいで、俺が悩まなくちゃなんないわけ?ほんと俺らしくない。 それに今日の俺、思考や決意がブレブレだ。 夏希のこと考えないようにしようとすればするほど考えてしまうし、あいつ自身がお気に入りなんじゃなくて『男だから』と否定してみたり、他のやつを探そうと思ってみたり。挙げ句、さっさとあいつへの執着を断ち切ろうと決めたはずなのに、カナに取られたくないとか思ってしまうし。カナとあいつが接触してるんじゃないか、って考えるだけでモヤッとしてしまう。 なにこれ、まるで嫉妬みたいな……。……いやいや、こんなのが嫉妬とか絶対ないだろ。ちょっと執着はしてるかもしれないけど……。 「…………探り、入れてみようかな……」 男のセフレを作るよりもそっちの方が簡単そうだし、二人の間に面識がないと分かればその点に関しては悩むこともなくなるだろう。カナははぐらかしそうだから、探りを入れるのは反応が分かりやすい夏希にしよう。明日朝イチで呼び出して……何て聞く?率直に『カナと会ったことあるの?』って聞けばいいのか?でも、それって二人の関係を意識してるみたいだ。ただの見知らぬ他人でいてほしいのに、俺の方からカナの話題を出すのってどうなんだろう。 「やっぱ、それとなく聞くしかないよなぁ……」 夏希の中に遊佐彼方という存在がないか確認するだけ。たったそれだけのことなのに、カナの話を出さずにとなるとなかなか難しそうだ。簡単そう、とか思ってた数分前の自分を鼻で笑ってやりたくなった。

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