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学校を出てから、電池切れなら充電すればいいんだと気がついた俺は、モバイルバッテリーを買いにコンビニに立ち寄った。けど、店の前まで来てもっと重大なことに気づいた。……財布がない。カナに持たせたままの鞄の中に入ってるんだった……。 「ほんと最悪……」 もう諦めて帰るしかないのか……。あの家庭教師はきっと部屋で俺の帰りを待ってる。あんなのより夏希の相手した方が全然いいのに。きっと今まで全部カナに押し付けてきたからツケが回ってきたんだ。 気分が急降下していく。コンビニ前の歩道の柵に寄りかかって、これからどうするか考えていると後ろから声をかけられた。 「あれ?ハルくん?やっぱりハルくんだぁ~」 「……ああ、なんだ、あんたか」 柵を挟んで俺の真後ろの道路に停められた車の、助手席側の窓が下がって中から女が顔を覗かせた。どこかで見たことのある顔だと思ったら、何週間か前に一度だけヤった人だった。確かあの日は夏希に用事があって呼び出せなかったんだっけ。夜の繁華街をぶらついていたらいきなり声をかけられてホテルに直行した気がする。 女は「ちょっと待っててね」と言って、コンビニの駐車場に入っていった。呼びかけてきたくらいだから何か用があるのかと思って女のところへ行く。車から下りてきた女は仕事帰りらしくスーツだった。 「連絡先交換してなかったからもう会えないかと思ってたの。こんなとこで会えてよかったぁ」 「……で、何か用?」 「ハルくん、これから予定ある?もしないなら……このままホテル行こうよ」 胸を押し付けるように腕に絡み付いてきた女が上目遣いで見上げてきた。夏希の柔らかい香りとは程遠い香水のキツい匂いが鼻を突く。 うん、どうしようかな。この人、ちょっと喘ぎすぎてうるさかったけど体の相性はまあまあ良かった。前の俺のように流されてもいいけど……今は夏希の方が気になる。 女を取るか夏希を取るか揺れていると、すーっと指先で首筋を撫でられた。 「……未成年を堂々とホテルに誘うのはどうかと思うけど」 「じゃあお家にする?お姉さん、ハルくんと遊びたいなぁ。ハルくんだってこの前の、よかったでしょ?」 「…………他よりは悪くなかったってだけ。いいよ、遊んであげても」 「やったぁ!早く行こ!」 準備室での続きは夏希とするつもりだったけど連絡とれないしどこにいるか分かんないし、だったらこの人で発散したっていいだろう。最近は夏希としかヤってなかったけど、他の人がダメになったわけじゃない。別に夏希にこだわることなんてないんだ。 目の前に差し出された据え膳を食わないほど俺は紳士じゃなかった。 誰に対してか心の中でいろいろ言い訳をしながら、絡められた腕を引かれて女の車に乗り込む。結局向かったのはホテルだった。がっついてくる女に萎えてヤる気がなくなりそうになったけど、これが夏希だったらと想像してみれば簡単に相手を満足させることができた。 久しぶりに抱いた女の体はやっぱり男である夏希の体とは全然違ってて、不思議なことになんだか物足りなかった。

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