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二人で検索をかけて色々なページを見てあれこれ話し合う。クリームを塗るとか冷やすとか逆に温めるとかマッサージをするとか、いろいろな方法が出てきてかえって混乱してしまった。 探した中で一番手っ取り早そうだったコンシーラーを使うという方法も、制服が汚れるからという理由で早々に却下された。 「結局どれが一番効果的なんだよ……」 「今まではどうしてきたの?」 「今までは……見えないところにしか付けられてこなかったから服で隠せてたけど……」 「ほう、なるほどね」 「……なんだよ」 「今までも付けられたことがあったのか、って思っただけ」 夏希には絶対に教えてあげないけど、ここだけの話、ハルはキスマークを付けて勘違いされるのは面倒だからと言って、徹底してセフレ相手には付けてこなかったはずだ。やっぱり夏希は特別ということか。 なんとも言えない気持ちになりながらネット記事を流し読みしていると、その中に気になるものを発見して夏希を呼ぶ。 「これはどう?しっかり隠れるみたいだよ」 「ん?『傷あとやあざ、タトゥーを隠すためのテープです!』か……。うん、これいいな」 「薬局に売ってるみたいだし買いに行く?」 「…………いや、もしかしたら家にあるかも」 そう言うと膝に乗っていたルルちゃんを俺の膝に移して、小走りでリビングから出ていってしまった。相変わらず小動物みたいでいちいち動作が可愛いな。ご主人さまの膝じゃなくなっても寝続けるルルちゃんももちろん可愛いし、この家には可愛いものしかいないのか。 少しして戻ってきた夏希は救急箱を抱えていて、座るとすぐに蓋を開けて中身を漁り始めた。 「ああ、あったわ。兄貴が使ってたやつの余りだけど」 救急箱から出てきたのは大小様々な肌色のテープやシート類だった。その中の一つを手にとって説明書きを読んでみる。ネットに書いてあった通り、傷跡やタトゥーの上から貼ると隠せるというものだった。タトゥー用と傷跡用があって仕様が若干違うらしい。今手にしているのはタトゥー用だけど、キスマークを隠すなら傷跡用の方が良さそうかな。 「これをお兄さんが?」 「そう。うちの兄貴、ネットショップの定期便で買うくらい使ってたらしくて……。え、なんでだ?」 「俺に聞かれても……」 どうやら詳しくは知らないみたいで、お兄さんに目立つ傷跡があったりタトゥーを入れていた覚えはないらしく、心底不思議そうにしていた。まあそれらを隠すためのグッズなんだから、実際に隠したい何かがあったとしてもこのテープを貼っていたら分からないよな。 救急箱に入っていた大量のテープを呆然と見つめながら、「ほんと謎すぎる……」と呟いていた。 お兄さんの謎はひとまず置いといて、ちゃんと使えそうなものを手に入れることができたから当初の目的を達成すべく夏希に向き直る。 「試しに一枚使ってみたら?貼ってあげようか?」 「ん、そうだな。よろしく」 指に貼る絆創膏くらいの大きさのシートを渡してきたから、フィルムから剥がして一番目立つところに付けられたキスマークの上に貼ってあげた。肌になじむ色だから近くでじっくり見ない限り分からないな。これなら本当にお兄さんが使ってても分からないだろう。 「大丈夫そうだよ」 「ん、じゃあこれしてくわ。何とかなって良かった。彼方、ありがとうな」 「……純粋に疑問なんだけど、ハルにキスマーク付けないでって言わないの?」 「あー……噛まないようには言ったけど……、そういえばこれに関しては言わなかったかも」 なんでもない風にぐっと伸びをする夏希を見て込み上げてきた言葉を飲み込む。夏希が困っているなら力になってあげたいけど、その原因がハルだから自分でもよく分からない複雑な気持ちだ。夏希を困らせるやつなんかやめて俺にしたら、って思っても伝えるのは今じゃない。ハルとヤらないでくれなんて言える関係でもないし、もしかしてハルが向けてくる独占欲を甘んじて受け入れてるんじゃないかと疑ってしまって自己嫌悪に陥った。 今日のキスマークみたいに、俺が何をしてもきっとハルに上書きされてしまうだろう。なんせ恋愛事に関しては圧倒的にハルの方が経験値が多いから、同じことをしていては一生好きになってもらえない気がする。さてどう行動するべきか。 「……もー、ルルちゃん。まったく夏希は困ったご主人さまだねぇ」 「おいどういうことだ」 「なぉーん……」 ルルちゃんがまっすぐな目で俺を見上げてくるから、全部見透かされているような気持ちになった。

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