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A:1-3
「続き、しよ?」
目の前に立つこいつの身長は俺より少し高い。目線を合わせるように顎を掬われ、耳元で囁かれた言葉は蝕むようにじわじわと身体に広がって、瞼を閉じればワイシャツの中の素肌に手が触れた。素直に従えば俺を気持ちよくさせてくれる。
「んっ………」
「可愛い」
「そういうこと……、男相手に言うなって……」
「なんで?手も、足も、顔も、こんなところだって、全部可愛いのに」
真っ直ぐ見つめられて言われると、自分でもびっくりするくらい胸が高鳴る。やばい、なんか……変な感じに緊張してきた……。
そんな俺とは対照的に、目の前のこいつは余裕そうに口元に笑みを浮かべたまま手を動かすのを止めない。……性格はひとまず置いといて、俺はこいつの整っている顔や心地良い声が好きだ。好みの顔が間近にあって、耳触りの良い声で全身を撫でられるのは、堪らなく気持ちいい。
「ねえ、俺のこと好き?」
「………別に」
「好きか、嫌いか、ちゃんと答えてよ」
「ッ、ああっ!き、嫌いじゃないからっ……それ、やめ……」
こいつに開発された乳首をぎゅうっと抓られて、痛みと快感で背中が反る。胸を突き出したようになってしまって更に愛撫が強くなった。身を捩ろうにもぴったりとくっついてくるこいつが邪魔で、壁に凭れたままズルズルと床へへたり込んだ。
「ぁッ……や……」
「いい眺め……。ああほら、逃げないで。気持ちよくなりたいでしょ?」
「そこ、だめっ……!ゃ、あ、んッ……」
「んっ……ふふ、ちゅー、気持ちいいね?」
いつの間にか取り出されていたモノを扱かれてびくびくと腰が跳ねる。たくさんキスをされて、乳首も弄られて、モノも扱かれて……。上からも下からも快感を与えられてすぐに達しそうになる。
「はぁっ……やだっ、も、イくッ……!」
「ん、イッて」
「あ、ぁあんンンッ……!!」
一際大きい嬌声は、覆い被さってきたこいつの口の中に吸い込まれていった。下から睨み付ける俺を鼻で笑ってゆっくりと離れていくと、俺に見せつけるように手で受け止めたそれを舐めた。
「っ!?なにして……!」
「んー、普通に不味い」
「当たり前だろ!そんなもの舐めるなよ!」
「だって舐めたかったんだもん」
不味いと言いながら、手についているものを舐め取っていく。
綺麗に全部舐め終わった奴は「ごちそうさま」とかほざいてにっこり微笑んだ後、あっさり俺の上から退いて、準備室に備え付けてある流し台で手を洗い始めた。
鼻歌なんか歌っちゃって、かなり機嫌が良いらしい。服を整えながらその後ろ姿を見ていると、不意にガチャッと音を立てて準備室のドアが開いた。
びっくりして息を殺す。俺がいるところからだと奴の姿しか見えなくて、誰が入ってきたのか分からない。
「あー、いたいた。探したよ、ハル」
「……なんでカナがここにいるわけ?」
「教室に行ったんだけど、見当たらなかったから。クラスの子に聞いたら特別棟に行った、って言われてね。特別棟って言われたら、もうここしか思い付かないよね」
声からして男のようだ。あいつに親しげに話しかけているけど、ここから窺える限りあいつは険しい顔をしている。
二つあるドアのうち、廊下に繋がっている方には鍵が掛かっていて、その上カーテンが閉まっているから外から中を覗くことはできない。いきなり現れた男が立っているのは彫塑室に繋がるドアだ。
あいつの知り合いってことはどうせ似たような奴なんだろう。やたら出ていって絡まれるのは絶対に嫌だ。大人しく息を潜めて成り行きを見守っていると、準備室の中に男が入ってきた。慌てて部屋の奥、棚の影に隠れる。
「ハルはこんなとこで何してたの?」
「……別に。関係ないでしょ」
「一人?」
「だったら何?」
テキトーにあしらうあいつに食い下がってしつこく聞いてくる男。
「じゃあ帰ろう?家庭教師が来るんだから、今日こそはサボらせないよ。ハルの代わりに受けるなんてもう御免だからね」
「はぁ!?ち、ちょっと離してよ!俺、あの女教師のこと嫌いなんだよ!」
「はいはい、わがまま言わない。俺の次はハルが我慢する番だからね」
「待てって!俺、まだやることが……!」
奴の声がだんだん遠ざかっていく。バタンッと乱暴にドアの閉まる音が聞こえてそっと顔を覗かせると、そこには誰もいなかった。
……まじかよ。置いていかれた。
あいつの気まぐれに振り回されて置き去り、なんてこと今までに何回もあったから構わないけど、今回みたいに誰かが乱入してきたのは初めてだ。
別に一緒に帰る約束とかをしてたわけじゃない。でも学校であいつが盛った時はそのあとお持ち帰りされることが多かったから、こうして一人になるのは初めてに等しかった。
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