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なんでよりにもよってカナにバレてしまったんだ。 カナにはちゃんと初恋の経験があって自分にはまだない。それがなんとも恥ずかしいというか、情けないというか。勝ち負けの問題じゃないのは分かってるけど、でもどうしてもカナに負けた気がして悔しかった。 誰かを好きになれるものならとっくに好きになってる。お互いを想い合ってる関係に憧れがないわけじゃない。でも自分の中にあるラインを越えてくる人がなかなか現れないんだから仕方ないだろう。こればかりは俺一人で解決できる問題じゃないからなぁ……なんて。 「……友達としての好きとか、家族愛とかはちゃんと分かる。でも『恋愛的な好き』ってなると一気に分からなくなるんだよね。恋をするとどういう状態になるのかは分かるし、だからこそ自分は誰かに恋をしたことがないんだって言える。好きなタイプも理想のタイプもはっきりしてるんだけどね」 「今まで何人も彼女いたよね。その子たちはどうだったの?」 「付き合ってればいつか好きになるかなって思ってたけど……いつもなんか違う感じ。しっくりこないっていうか、みんな友達以上恋人未満みたいな。付き合ってるからヤることはヤるし友達よりは優先するくらいで、あとはほぼ友達と変わんない。結局のところ、友達としては好きだけどそれ以上は……ってなる」 歴代の彼女たちには申し訳ないけど、好きになれなかったのもしっくり来なかったのも全部俺の問題であって、決して相手が悪かったなんてことはない。 そりゃあ何一つ合わない子よりは話が合う子とか体の相性がいい子の方が一緒にいて楽しいから好きだ。でもその『好き』はきっと恋愛的な好きじゃなくて、それこそ友達に対して感じる好きと同じ気がする。彼女だとかセフレだとか関係なく誰にでも当てはまるし、同じような人が現れたらその人でもいいと思う。ずっとその子じゃなきゃダメだ、とは一切ならない。 それに相手のことが良く見えるのなんて付き合い初めとヤってる時だけだ。初めのうちは今度こそ好きになれるといいなと思って付き合うけどその時が一番ピークで、結局だんだん冷めていってしまう。告白されて付き合うってなった時にどうせ別れるし、とか思ってしまうのが良くないんだろうか。でも、結局飽きて別れるんだよなぁ……。 「セフレは彼女候補にはならないの?」 「んー……セフレはそれこそ後腐れなくヤれればいいからどんな人かとかあんまり興味ないし、その状態でさらに好きになるって難しいよね」 「じゃあハルにとって彼女とかセフレの違いって何?」 「彼女は一人しか作れなくてセフレは何人でも作れる、かな。浮気して面倒なことになりたくないし彼女は一人だけなの。彼女は好きになれるよう努力圏内でセフレは圏外、的な……?好きになったことないから自分でもよく分かんないや」 「……なんか、うん……ハルもなかなか複雑なんだね……」 カナは困ったような表情を浮かべて「どうしたものかねぇ」とぼやいていた。普段はあまり、というか自衛するための情報収集以外は全くといっていいほど俺の恋愛には首を突っ込んで来ないから、こんなに詳しく俺の恋愛観について話すのなんて初めてだ。カナがこんな反応をするってことは俺って相当拗らせてるってことだよなぁ……。 「物でも人でも、俺が誰かと共有するの無理なこと知ってるでしょ」 「知ってるけどさぁ。例外とかは全くないわけ?」 「どうだろうね。そんな人に会ったことがないからわかんないや。けど、そうだなぁ……俺以外の人のものにならないって確信したら、本気で好きになれるかもなぁ。一生逃がさないかもしれない。……でもそういう人って絶対にいないじゃん」 俺のことを誰よりも近くで見てきたカナならよく分かるはずだ。生まれもった性質のように頑固で厄介なこだわりのせいで、自分で自分の首を絞めて悩んできたことも、対人関係を築く上での核になっていて今さら矯正する方が難しいことも、そして俺があえてそのこだわりを直そうとしていないことも。 それを捨ててまで手に入れたいと思える存在が、例外なんてそんなものがあるんだったら誰よりも先に俺が知りたい。 「俺のこと好きな子はみんな好きだけど、別に俺のいないところで何してようがどうでもいいし……。だから一生好きとか、真面目な好きとか、誰が一番好きとか、俺に聞かれても……。当たり障りのないことしか言えないよ。そもそも理想のタイプの子と付き合ったことなんて一度もないしね」 「よくもまあ、自分を好いてくれてる子に対してそこまでドライになれるね」 「だって全部俺のものにはなってくれないでしょ。どうせ俺以外の人とも仲良くなるし俺以外も好きになる。そんなんだったら遊びで十分だってなるよ」 「……ハルってかなり独占欲強いよね」 あきれた様子でそう言うカナに今度はこっちが驚く番だった。

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