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焼き上がった玉子焼きを切ってお皿に移して、エプロンを外した夏希はダイニングに移動した。そのあとに着いていって夏希と向かい合って座る。 いただきますをして早速、夏希お手製の玉子焼きに手をつける。砂糖多めのふわふわなだし巻き玉子だ。 「夏希、この玉子焼き美味しいね」 「まじ?いつも通りの量の砂糖入れたけど大丈夫?」 「うん。俺、甘い方が好きなんだ」 「……なら、よかった」 ツン多めの夏希くんも手料理を褒められて悪い気はしないらしく嬉しそうにはにかんだ。少しずつ笑顔を見せてくれる割合が多くなってきてすごく嬉しい。この笑顔のためなら何だってできる気がする。 味覚の好みもぴったりだし性格も合いそうだし、もうこれって運命じゃない?ハルに渡すのはもったいないなぁ。 「夏希は良い奥さんになるね」 「はぁ?なんで俺が奥さんなんだよ」 「えっ、だってヤるとき……いや、何でもない」 「なっ!?朝から何言おうとしてんだよ!!俺は男だ!」 言いかけて途中で止めると、夏希は恥ずかしさとちょっと悔しさが入り交じった表情で、顔を真っ赤にして抗議してきた。俺の言いたかったことを否定はしないらしい。威嚇してる猫みたいで可愛いな、なんて的外れなことを考えてると、それが伝わったのかキッと睨まれた。はいはい、可愛い可愛い。 「結婚するんだったら夏希みたいな奥さんがいいなぁ」 「…………バカか」 「あはは、俺、夏希バカになっちゃいそう」 「何それ、意味分かんねぇし」 こんなに楽しい朝食はいつぶりだろう。大抵一人で食べるか、ハルが気が向いた時は一緒に食べてるけど、勉強の話とか当たり障りのない会話だからこんなに盛り上がらない。ハルは朝弱いからテンションも低いし。 ハルと俺は仲が悪いわけじゃないけどすごく良いってわけでもない。ただお互いが何してるかとか何を考えてるのかとかが、テレパシーみたいに何となく分かるってだけでそこら辺の兄弟と変わらないと思う。 「そうだ、夏希は兄弟いるの?」 「兄貴と姉貴が一人ずついる。兄貴は社会人で、姉貴は大学生。二人とも自立してるからほとんど帰ってこないけど」 「そうなんだ、寂しいね」 「…………別に。毎日連絡取ってるし、仮にいたとしても色々うるさいだけだから」 後半にいくにつれてだんだん小さくなっていく夏希の声。しゅんとして目に見えて元気がなくなってしまった。悪態をついていてもやはり寂しい部分はあるんだろう。なんとか励ましの言葉をかけようとしたら、ぱっと顔を上げて俺を見た。 「あ、でも昨日、帰ってきたら姉貴がいた。彼方が起きる前に帰ったけど」 「そうだったの?そういえば夏希の他にもう一人いたような……。あぁ……挨拶しとけばよかった」 「そのうちまた会えるだろ。……いや、会ってもスルーしてくれ。姉貴まじでめんどくさいから」 「えーなんで?」 「なんでも」 それ以上は答えない、とでも言うように、ちょうど食べ終わった夏希は逃げるように食器を片付けに行った。俺もすぐに食べ終えて、今日は二人並んで洗いものをした。 夏希はスルーしろと言ったけど、でも家族には認識されておいた方がいいだろう。夏希のお姉さんだからきっと美人だろう。お兄さんもどんな人なのか興味がある。もし会えることがあったら構わずに挨拶しておこう。

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