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ベッドに寝転んで夏希のことを考えていたらいつの間に寝落ちしていたみたいで、気づいたときにはもう日が昇っていた。起きてすぐにスマホを確認すると、朝方に夏希から『わかった』とメッセージが来ていて、思わずよしっとガッツポーズをしてしまった。 「なに喜んでんだ俺……気持ち悪……」 自分で自分の反応にちょっと引いた。返信が来る来ないで一喜一憂しているなんて俺は恋する乙女かよ……。 とりあえず夏希と会えることになったから急いで支度をする。起きるのが遅かったせいで待ち合わせ時間まであと三十分しかない。家を出る前にカナに今どこにいるのかメッセージを送るとひとこと、『家』とだけ返ってきた。いつの間に帰って来たんだろう。自分の部屋を出て隣の部屋のドア越しに「ちょっと出かけてくる」と伝え一階に下りると、カナからなぜかメッセージで『行ってらっしゃい』ときた。 とにかくカナがいるんじゃ夏希を家に連れて来ることはできないよな……。それこそばったり会ったら探りを入れるどころじゃなくなる。昨日みたいにカナが図書館にでも行ってくれたらいいんだけどなぁ。まあ、どこで話すかは夏希と会ってから決めるのでもいいか。 俺が家を出たところでちょうど夏希から『着いた』と連絡が来た。今日はどこにも寄らないで真っ直ぐ公園に向かう。 「二日連続で呼び出すとか、お前って相当暇なの?」 昨日と同じように木陰のベンチで待っていた夏希は俺を目にするなりそう言い放った。その隣に座って夏希と目を合わせる。 俺だってまさか初っ端からこんなに呼び出すとは思ってなかったんだけどな。だけど気になるものは気になるし、今日を逃したらたぶんずっと気になったままだ。 「俺は俺でそれなりに忙しいんだけどね?」 夏希のことを考えたり夏希のことで悩んだり。あれ、俺もしかして……、夏休みに入ってから夏希のことしか考えてないか?夏休みといってもまだ二日しか経ってないけど、でも暇さえあれば夏希のことばかり考えてる。 俺の悩みの種である夏希はため息をついて、「忙しいなら俺なんか呼び出してんじゃねぇよ……」と呟いていた。 「……で、今日はどこ行くんだよ?」 「え?あー、えっと……」 まだどこに行くか決まってない。ヤるわけでもないからホテルに行くのはなんか違うし、俺の家といってもカナがいるし……。かといってこのまま外にいるのも暑くて嫌だ。 「今日は……、大通りのカフェにでも行こうか」 「は?……なんで?」 ……言われると思った。 夏希は怪訝そうな顔で俺を見てくる。今までヤるためにしか呼び出したことがなかったから、変なことをされるとでも思っているのだろう。探りを入れるために呼び出したけど、いきなりカナのことを聞くのは違うよなぁ。 なんと答えるべきか考えあぐねていると、夏希の顔色がさぁっと青くなった。 「まさか、お前……そんなところで……」 「いやいやいや!何を勘違いしてるのか知らないけど、俺はそこまで変態じゃないから!今日はその……ヤるために呼び出したんじゃないっていうか……」 「……は?ヤるためじゃないって……。ついにお前、ヤりすぎて頭がおかしくなったのか……?」 夏希の中の俺のイメージって……。まあ、でもそういう事しかして来なかったんだから仕方がない。 ちなみに夏希が想像したであろう公衆の面前でヤりたいとかいう性癖は持ってないし、特殊プレイとやらにはあまり興味がない。……誰かさんがやりたいと言えば別だけど。俺はあくまでもライトに行為を楽しみたい派だ。 「あ、ごめん、電話きた」 肩を落とした俺をよそに夏希はポケットから着信を告げるスマホを取り出した。画面を見て夏希の眉間にシワが寄る。どうやら電話をかけてきたのはあまり好ましくない相手らしい。 「いきなり何だよ?……ああ、あいつなら大丈夫、もう治ったけど。…………ん、分かった、伝えとく」 相手は誰なんだろうとぼんやり考えていたら、通話を終えた夏希と目が合った。「俺といるのに電話?」なんて冗談めかして言ったら、呆れた声で「姉貴だよ」と返ってきた。 姉貴……お姉さん……。 夏希にお姉さんがいるなんて初めて聞いた。年下の兄弟がいるようには見えないから、何となく一人っ子かと思ってた。 今までお互いの家族のことなんて話す機会なかったし、そもそもセックスに関係ない会話をしたことがあったかどうかも危うい。本当にヤることしかしてなかったんだなぁ……。 「ほんとに全部、いまさらだ……」 「あ?なんか言った?」 「ううん。何でもない」 「あっそ。……つーか今日暑くね?早くどっか涼しいとこ行きてぇわ」 夏希はシャツの胸元を掴んでパタパタと扇いだ。ちらりと見えてしまった鎖骨に視線が吸い寄せられて、身に覚えのない痕があることに気づいた。

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