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【8】罪悪感などあるはずもない

やっと終わった。 これが兄崎の本音だ。 けしからんとか、思われても本音なのだから仕方が無い。 本日も実に実に堅苦しい会議で肩が凝る。 冷やかに笑う評議会議長を尻目に、各委員会と生徒会が無理難題を押し付け合い批判を浴びない程度に反論を繰り広げ、最終的には予算の取り合いに転がり締めは風紀と美化の口論だ。 美化と風紀はもう少し仲良くできないものか――最後は皆共通の感想と言う嫌な連帯意識でもって終了だ。 こんな会議ではあるが、唯一良かった事は、最近忙しくてなかなか会えない恋人、春日との再会だ。 どうせなら再会を祝して食事でも楽しみたい。 楽しみなんてそれくらいしかないのだから、さっさと終われ糞会議、だなんて思うことに不謹慎だろうが罪悪感などあるはずもない。 三年になりクラスが別になり、さらに春日目的で入った生徒会室ではなかなか会うことができない。何のための生徒会だよ糞がと本気で考えていた。 春日に飢えに飢えていた兄崎の前にぶら下げられた「再会」という餌は何物にも代えがたい代物なのだ。 しかし食事といっても、多忙で買い物に行く事が出来ず材料がない。 できれば手料理でもてなし部屋で二人ゆっくり過ごしたかったが、仕方がない。 竜ヶ崎学園は、通学困難な生徒の為に指定学生寮がある。 春日も兄崎も寮住まいだ。 ただし、使用している寮は別棟の為、校内で会えない時間を寮で埋め合わせているわけではない。さらに付け加えれば、春日の住んでいる寮は個室のキッチンバストイレ付で、兄崎が住んでいる寮は個室であっても、キッチンバストイレが共同だ。 食堂を使用する場合、基本2日までには、食事注文表に名前を記載しておく必要がある。 当日キャンセルする場合は、破棄を申し出るが当然その分の食費は返る筈はない。 …食堂で二人で過ごし、そのあと部屋に誘おう。 妥協は必要。本命は食事の内容より誘う相手だ。 寮の夕飯だから栄養価は補償されてるが、メニューにも味にも当たり外れが有り、不味くはないが特別うまいものではない。 むしろ、兄崎の方が美味しい料理を提供できるのではないかと思っている。 料理は好きだし得意なのだ。 そうだ。 デザートくらいは作れるかも。 そういうわけで、これから一緒に帰ろうぜ。で、食事でもどうよ。どうせお前、食堂でボッチ飯だろ。会長様って人が寄り付かねぇもんなぁ。さーみーしーいー。優しい俺様がご一緒したげるよ。もちろん食事の後は俺の手作りのデザートとベッドでのサービスつきで。贅沢すぎて、きっと春日は泣いて喜ぶはずだ。あは…あははははは。あー、でも、別棟だから夕食後の外出となると門限とかあるんだよね。チキショウ。 兄崎は、寮にありがちな門限とかルールを無視し、ベッドではどうしてやろうと不埒な妄想にふけっていると気の抜けた空気の中で雑談と席を立つ音が耳障りに響く。

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