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【9】2人のバックにハブとマングースが見えるぜ!
春日、そう彼の名前を呼ぼうとした。
「春日さん」
兄崎の声を遮ったのは、一年にして生徒会会計を務める朝比奈 更紗だ。
声変わりなにそれ、美味しいの?を形容したような柔らかな声。
「お疲れ。え?何?飯?別に良いぞ」
「本当ですか?」
てめぇ、更紗!
何俺を差し置いて春日誘ってるんだよ!
しかも、何その上目使い45度!!ムカつく位可愛いんですけど。
身長差の所為で、意図してるのかは不明だが上目遣いが自然に決まる。
てめぇ男の癖に!しかも、上目遣い上手いし…くやしい…でも春日が嬉しそう…悔しい…でも認めちゃう。可愛い。
兄崎の脳内は微妙に混乱していた。
そこに、もう一つ陽気な声が割り込む。
「二人で何コソコソ話してるの?何?夕飯?なら俺も行く」
イギリスから留学中の会計監査委員のフレデリック=バートリーの登場に更紗の顔が笑顔のまま固まる。
あ、これ何か怒ってるな。
兄崎は半ば呆けたように目の前の光景を眺める。
「俺は良いけど…」
「二人より三人の方が楽しいよ!サラも良いだろ?」
ちらりと春日が更紗を見ると、彼は貼り付けたような笑顔を崩さず「宜しいで すよ?」という。心の中ではフレデリックへの罵詈雑言の嵐だろう。
「ははは!いやぁ、悪いねぇサラ。」
「ふふふ、悪い?何を仰っているのやら、僕にはさっぱり …」
「はははは、本当はオズと二人っきりが良いんだけどぉ」
ちなみにオズとは春日の愛称だ。
「ふふふふ、後から出てきて何を仰いますか。ふふ」
こええええええ!!!笑顔がこえええええ。
2人のバックにハブとマングースが見えるぜ!
目の前で繰り広げられる光景に周囲は避けて通る。
気づかないのは当人達だけだ。
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