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【12】愛さえあれば何でも許される。多分

「やっほー春日。帰ってくるの早くね?」 「ッっ…兄崎?ここ俺の部屋だよな!?」 「うん、お前のお部屋。」 「人の部屋で何してんだ!?」 「やだなぁ。待ち伏せだよ。待・ち・伏・せ」 肩越しに振り向く黄味の強い薄茶の瞳が驚きに見開かれる。 そりゃそうだ。驚くだろう。 施錠したはずの自室に他人が待ち伏せしていて、部屋に入ったとたん背後から羽交い絞めされているのだから。 兄崎は、目を見開く春日に、にんまりと笑いかける。 「つぅか、なんで他寮の生徒が入れるんだよ!?」 「え?そこなの?」 食堂は「かなやま壮」の棟一階にあり、「さんすい」壮の生徒は利用が終われば、自分たちの棟に帰らなくてはならない。 ちなみに、食堂利用は個室の寮、つまり「かなやま壮」と「さんすい壮」以外の生徒は使用できない。 相部屋、4人部屋の寮にも食堂は有るが、メニューの良し悪しは知らない。 寮によっては食堂がない棟もある。 「愛の力かな」 入口から堂々と入っても良いが、その場合受付で面会証を記入しなくてはならない。 誰々が、誰々を、何時何分に訪ねてきた、などとわざわざ記載するのだ。 しかし春日が更紗たちとの約束を済ませ帰所となれば、留守中の春日の部屋を訪ねさらに門限過ぎまで居座ると後々面倒なことになりかねない。 管理人や寮長に目を付けられ、今後立ち入り禁止になる可能性があるからだ。 というわけで寮の裏側の、コンクリ製の外付けの非常階段の手すりから、廊下にある二階の共同トイレの窓より侵入したのだ。 意外にセキュリティ面に弱点が多い。

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