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第11話 なんぱ

その子はほかの男子たちがいなくなると携帯をいじっていたがしばらくすると飽きてしまったのか何もしないで宙を眺めていた。 「え?あの子マジで可愛くね?声かけようぜ」 「やば、マジじゃんめちゃくちゃかわい〜」 遠くからそんな会話が聞こえてきて、大学生らしい2人組が声をかけた。 「ねえ君。今1人なの?」 「え?まぁ今は1人ですよ〜。」 多分自分が男だからナンパされてるって気づいてないんだろう。その子は大学生たちに対して友達と話す時とほぼ変わらない態度で接していた。 「暇ではないんですよ!」 「え〜なんで?美味しいものすきなだけ奢ってあげるからどっか行こうよ〜。」 “好きなだけ”という単語を聞いた瞬間にその子の目の色が変わった。明らかに高校生には見えないからお金を持ってると思ったんだろう。 「いいんですか?でもなんで急に?」 「ん〜友達になりたいなと思って!」 「いいじゃん、近くにスイーツの店あったよね?いこ?」 大学生2人組は男の娘の腰に手を回して少し強引に誘導した。最初は強引さに少し戸惑ってたけど、スイーツ屋の話に夢中になって途中からは抵抗もせず楽しそうな顔をしていた。 ちょろすぎるだろこいつ、どんだけ食いしん坊なんだよ。 ナンパされるなって仲間たちに言われてただろ。 心の中で散々文句を言うと俺はそいつらの後を急いで追いかけていた。

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