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第12話 連れ去り
「おい、俊。どこ行くんだよっ。」
名前も取り巻き達が言ってるのを聞いただけで、喋ったこともないのにその子の腕を強い力で掴んだ。
目の前に俊の顔がある。この距離でみても男には見えない。でもこの顔どこかで見たことがある。答えがすぐそこまで出てきているのに分からない。
「え.......?なんで.......?」
俊はぽかんと口を開けて呆然としている。
なんでってなんだよ.......。強い力で俊を引っ張った。
「すいません。こいつ俺の友達なんで。そういうのやめてください。あとこいつ男ですよ。失礼しますね」
「え?男?まじかよ」
「女にしか見えねえ」
そんな男達の声をガン無視して俺は俊を連れて、ふたりで近くのカフェに入った。
カフェに入って2人で席に座ったが話は進まない。こいつを強引に連れてきちゃったし、俺も大学生のやつらと対して変わんねえな。心做しか目の前の俊の顔は赤い。
「.......なぁ、おまえ本当に男なのか?」
「.......」
俊は何も話さない。
「なぁ。なんで何も言わないんだ?」
「.......たく.......ない」
「え?」
「店員さんに気持ち悪いと思われたくないんですっ.......!」
ブルブルと肩を震わせて俊は小さな声で言った。
店員さんと呼ばれて初めて俺は目の前のこいつがあの常連客だと気づいた。
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