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第21話 よかった

「ひいいいっ!」 映画が始まってはや五分。俺は俊を股の間に挟んで俊の背もたれになるように座っていた。俊は本当に怖いものが苦手らしかった。おばけが映る度にビクビクするのが面白い。 「なぁこれそんなに怖いか?」 「怖いよ!当たり前じゃん!馬鹿じゃないの?」 決して馬鹿ではないのに馬鹿と言われてすこしムカついたから顎で俊の頭をグリグリしてやった。 「いっ、いたいよ!」 俊が顔を赤くして振り返った。 .......キスをしそうな距離に俊の顔がある。 薄い唇、綺麗な肌、綺麗なぱっちり二重に少し赤い頬。 こいつ彼女とかいんのかな。こんな可愛くて女の子と付き合えるのか?想像すると少し胸がいたむような気がした。 「ははっ、わりーわりー」 「.......っもう。」 「なぁ、俊.......お前付き合ってるやついるの?」 「え?いないよ。どうしたの急に。」 「そっか.......なんでもない」 その言葉を聞いてどこか安心している自分がいた。

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