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第7話*エンディングドレス*②
箱の中には真っ白なウエディングドレス。
「これを彼女に?」
「はい、お願いします」
サリーは髪をブロンドがかったベージュに染め、高いヒールを履いていた。
『まあ、デカイのにこんな高いヒール』
「あ、お名刺渡しておきます。サリーと気軽にお呼びください」
「はあ、どうも・・」
【エンディングドレスデザイナー 山岸哲・美由紀】
『はあ、さとるだからサリーねえ・姉妹じゃなくて兄妹かよ。通りでデカイ訳だ』
「私の身長はおいといて」
「うおっ」
ツクモは胸の内を知られたかと思い焦った。
「基本的に私がデザイナー。美由紀がパタンナーです。状況で既製品も使用します。
少しずつですがいつもと違う送り出しをご希望される方もいらっしゃいますので」
「じゃあ、三時間で平気だな。また後で来る」
十夜たちはツクモの家を後にした。
「ふーん。エンディングドレスねえ・・」
ガシャン
処置室のドアが固く閉まる。
「ツクモー。終わったか?」
「だから不法侵入だってーの」
「山岸さん。これがコイツの仕事です」
棺のふたを開けると兄妹は息をのむ。ウエディングドレスを着た彼女は血斑も消え、
愛らしいピンクのチークで頬を彩られ、艶やかなグロスをつけて微笑んでいる。
「まるで今にもお父様とヴァージンロードを歩きそう・・」
それ以上の言葉が出ないサリーは両手で口元を押さえる。
「時間があるのか?さっさと行くぞ」
ツクモが動き出す。
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