10 / 65
第10話*MRSA*
ピッ
「んーみすずちゃん?どしたの、珍しいじゃん。ほーい。すぐ行くわ」
「STAFF ONRY」
ボカーン!思いきり足が飛んでくる。
「おまたせーみすずちゃん」
「ツクモ、ドアは手で開けて。壊れたら請求するわよ」
美鈴はあきれ顔だ。
「それよりこれ、見て欲しいの」
美鈴は書類をツクモに渡す。
「んー、どれどれ。MRSA?院内感染か」
「ええ、そして粘膜感染ではなく飛沫感染。おそらく結核やインフルエンザじゃないかしら」
「で、これは依頼なの?」
ツクモは書類をひらひらさせる。
「そうね。どうもあちらがノリ気ではないのよ。もうすぐ死体検案書のコピーと
エンバーミング依頼書が届くわ」
少しあきれ顔で美鈴が言う。
「MRSAを面倒くさがるエンバーマーなんて使い物にならないわ!」
「飛沫感染か、空調の向き変えておこう」
エンバーミングの基本
① 復元 体の欠損した部分などをワックスで復元。
② 感染症予防 体の洗浄、消毒を行い直接触れることが出来るようにする。
③ 防腐 体内の防腐処理をして一週間から十日ほど安置できる。腐敗も悪臭もない。
「52歳男性、肺結核か。若いな、病院がちゃんとしてりゃあMRSAなんて
起こさなかっただろうにな」
術台に乗せて洗浄、消毒、顔の産毛を剃る。皮膚が薄くなってしまっているので
慎重に刃を当てる。そして薬液の準備・・。
「体はきれいだな。そんなに時間はかからないか」
☆粘膜感染・接触感染ともいう。相手の傷などから感染。肝炎、ノロウイルスなど。
☆飛沫感染・咳やくしゃみなどの「しぶき」から感染。肺炎、インフルエンザなど。
ともだちにシェアしよう!