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第44話さらなる高み

「あら?ツクモにしては勘がいいじゃない?もちろん長谷川さんにも連絡するわよ」 「あいつさあ、この前ミスったばかりじゃん!それなのに何だよこれ?」 「アオイくん服を着ていらっしゃい」  まるでみすずに席をはずせと言われたようだった。 「あ・・はい。わかりました」 アオイは足早にリビングを後にする。 「こちらでも洗浄、消毒、出来る限りのことはするわ」 「いや、みすずちゃんのところはいつも信用してるさ。この前は安全パイのほぼ自爆だったけど、これ粘膜感染だぜ。飛沫とはわけが違う。また切ったりしたらどうすんだよ」 「もちろん病院にはわたしがいるわ。いつまでも洗浄と小切開じゃ困るの。彼女は エンバーマーなのよ?」 「とにかくこの件に関してはツクモのNOは通らないの。それにこれからは積極的に修復もさせるわ。そのためにツクモの所に通わせているのよ?明後日、準備しておいてね」 言いたい事だけ伝えるとみすずは再びパンプスの音を響かせながら帰って行った。 「くっそ!」  ツクモはドカッとソファに沈み込みテーブルをガンと蹴る。 「アーオーイーくーん」  バスルームの方から恐る恐るアオイが出てくる。ツクモがポンポンと太ももを叩く。 少しためらいながらもアオイはツクモの膝に腰を下ろす。 「はー・・」  ツクモはアオイを抱きしめながら深くため息をつく。 「難しいお仕事が入ったんですか?」 「うん。すげー面倒くさい仕事」 「アオイくん・・明後日の夜、顔が見たいな」 「あ、はい。塾がないから大丈夫ですよ」  少し照れてアオイがツクモの頬にキスをする。少しツクモの表情が和らいだ。

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