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第46話*向く仕事・向かない仕事*
案の定夕方にはみすずがものすごい勢いでやってきた。
物も言わずソファに座るみすず。こちらも無口のままソファに座るツクモ。
「長谷川さんに何を言ったの?」
みすずは立ち上がり強い口調でツクモを責め立てた。
「彼女泣いていたわよ。どうしてエンバーマーに向いていないなんて言ったのよ」
「何だ。一通り言ってるじゃん」
飄々とツクモが毒気つく。
「上げ足をとらないで。彼女は成績優秀な生徒だったのよ?」
「だからこそ、みすずちゃんは俺の所によこしたんじゃないの?」
「もちろんそうよ」
「アイツの鼻っ柱折るために」
思わずみすずの動きが止まる。
「確かにさあアイツは俺についてきたけど、負けないためについてきたって感じなんだよね。俺の持っているエンバーマーの本質をわかっていない。いつも勝負するような顔で来てるぜ?そんな奴に教える事なんて俺は一つもないね」
「ふー」
みすずはソファに沈み込む。
「十日以内。十日以内に候補の子を決めるわ。教育係を辞退することは出来ないんだから、勘違いはしないで頂戴」
それだけ言うとみすずはツクモの家を後にした。
「超うぜー」
ツクモはずるずるとソファに沈み込む。
みすずは少しだけ期待していた。
でもツクモには全部見破られていた。足早に病院に戻る。
「ツクモの持っている・・」
「俺の持っている・・」
「エンバーマーの本質」
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