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第48話*ひつじの仕事*
ピンポーン
「こ、こんにちは。よろしくお願いします」
田宮がツクモの家を訪れる。
「あー。ああ、もうすぐ病院から来る」
「お前さあ、前のやつと同期なんだよなあ?」
「あ、長谷川さんですか?はい、とても優秀な方で・・」
「優秀ねえ・・で羊は優秀なんですか?」
「えっひつじ?私ですか?・・あのお恥ずかしいですが、長谷川さん達よりはとても・・」
「あー。もう言わなくていいわ」
『みすずちゃん。ふり幅でかくね?』
ツクモは深くため息をつく。
病院からご遺体が届く。
作業台に乗せて静かに合掌する。
作業前には必ず行い、故人に敬意を払う。
「きれいになって皆さんの所に帰りましょうね」
羊子がご遺体に笑顔で声をかける。
ツクモは無言でその姿を見ていた。
「おい検案書読み上げろ」
「あ、はい。検案書・・けんあんしょ・・」
羊子が検案書を探し始めた。
「おい。後ろの作業台にあるだろ」
「あ!はい・・すみません」
「えと、ご遺体は70代女性、心不全・・」
『あーみすずちゃん。また振り出しからなのかようー。しかもコイツ遅いぞー。仕返しか?』
ツクモは肩を落としてグローブをつけ始めた。
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