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第49話*メーメーがんばる*
「こんにちは。よろしくお願いします・・」
「十分で支度しろ」
ツクモが指示を出しても羊子はいつも十分の壁はこえられない。
「検案書!」
ツクモが少しでも強く言うと、すぐ『びくっ』と怯え小さな声で話し出す。
技術も長谷川には遠く及ばなかった。しかしツクモの怒鳴る回数は減っていった。
羊子は必ずご遺体に声をかけていた。洗浄の時、マッサージの時、着衣の時、
「気持ちいいですか?」
「痛くないですか?」
ツクモも何も言わずマッサージを続ける。
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
羊子が深々と頭を下げる。
「おう。今日も遅かったなひつじ」
「す、すみません・・」
「まあ手順は頭に入っているんだけどなあ・・」
ツクモも少しあきれる。でも羊子の仕事内容にはさほど文句はなかった。
【ツクモ。彼女はどうかしら?】
【や、別に。仕事遅いなアイツ】
【遅くてもクビにしていなければいいわ】
みすずは少し安心したようだった。
あのこはきっとツクモの許せる資質を持っているのね。
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