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第52話*得手不得手*
ドカーン!
いきなりドアが蹴破られ、少し頬にススのついたツクモが入ってきた。
「あー。ちくしょー!お?おお?何この勢ぞろい感」
「今夜の事で俺たちに出番はない。だったら彼のそばにいた方がいいだろう?」
見るとまっ赤な目をしたアオイが立っていた。
「ツクモさん、お帰りなさい」
「ただいまアオイくん」
ツクモは優しく抱きしめたが、アオイは大勢の前で泣くとツクモに迷惑がかかると思い必死で涙をこらえていた。そんなアオイの手を取りツクモはソファに沈み込んだ。
「で、どうだった」
十夜が訊ねる。
「どーもこーもないでしょー?役立たずなんだからさー。早々の撤収だよ。あとは歯形照合だろ?大体焼死体と水死体はエンバーマーに役に立たないんだからさー。後ろの家屋の被害の少ない人だな。それでも顔はキレイだから本格的な処置は要らないし、出番ないな」
「彼女たちは?」
「あ、現地解散。でもゲーロゲロしてたから、まだ救急隊員に気を使ってもらってるんじゃないの?」
「お前なあ」
「だってあいつらはいつも台に寝かされている状態しか知らない。現場を知らないと使い物にならないだろ」
「それよりなんでアオイくんがいるんだよ!日付変わってるんだぞ。未成年だって言っただろう」
「あ、あのそれは・・」
スッと十夜がアオイの前に出る。
「彼の意志だ。もちろん俺も説得はした。だが絶対に首を動かさなかった。だから代表して俺が責任を持つということで、ご自宅から許可をもらった」
「だからって・・」
「お前はできるのかツクモ?彼が危険な事をしているときに家でコーヒーでも飲んでいられるのか?」
「・・」
言葉を失うツクモ。
「さーて。愛しいダーリンが帰ってきたから、邪魔ものは帰らなきゃー。ね、十夜さん」
サリーがわざと明るめに言う。
「・・そうだな。泉守も今夜はかかりっきりだろうから後日連絡しよう。俺は彼女たちを送って帰る。お前もよく休め」
「・・おう」
皆がバタバタと帰って行くと、とたんに家の中は静かになった。
「ありがとうねアオイくん。こんな時間まで」
「うわあああああん」
ツクモの話の途中でアオイは堰を切ったように泣き出した。強くツクモの服を握りしめて。
「ごめん。ごめんね。アオイくん。ただいま。待っていてくれてありがとう」
「遅いから送るね?」
アオイは首を振る。
「アオイくん?」
「さっき十夜さんにお願いしたんです。何時になるかわからないから帰らないって」
「え?」
「ツクモさん。俺、いますごく寒い」
「え?アオイくん」
「ツクモさんじゃなきゃ、温められない・・」
「俺の体、温められない・・」
「アオイ・・くん・・?」
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