6 / 44
第6話
「なぁユウ、今日はゲーセンに──」
「康太、俺パス」
「行くぞ……って、はぁ? あ、おい、ユウ!」
担任の教師がまたあしたと言うが早いか、結木は鞄を引っ掴んで足早に教室を後にする。いつものように遊びに行こうと声をかけた康太は呆気にとられながら首を傾げた。
「え、今のマジでユウ? 俺人違いしてる?」
「康太なに言ってんの。あれは正真正銘ユウですよー。何か用事でもあんだろ」
「まぁ、そうなんだろうけど。アイツがあんなはっきりしてんの滅多にねぇし」
「あー、言われてみれば確かにな。もしかして彼女だったりして」
「はぁ!? 俺聞いてないけど!?」
賑やかな教室のそんな会話は、もう遠く離れた結木の耳には届かない。
結木が図書室につくと、まだ図書委員は誰もいないようだった。放課後を迎えたばかりだからか利用者も誰もおらず、結木はとりあえずと奥へ進む。
目立つところに結木が借りた本の作者の特集コーナーが作られていた。ハードカバーが数冊に、文庫本もある。少しすき間が空いているのは結木が借りている分のスペースだろうか。
いちばん古そうな文庫本を手にし、結木は近くにあった椅子に腰を下ろした。
「へぇ。もしかして本当に読んだの?」
「……ん? あ」
ともだちにシェアしよう!