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第24話
秋もずい分深まって、踏まれればぱりぱりと音を鳴らす落ち葉は赤に黄色にとカラフルだ。
図書室の空気を入れ替えて、蒼生は窓を閉める。読書の秋、普段よりここを利用する生徒は確かに増えた気がするなと蒼生は思う。
「あ、湯川先輩みっけ」
「あ、大野くん。最近よく来るね」
「んー、そうかもしんないっすね」
そう、例えば啓の友人の、大野康太とか。
「えーっと。あった、これだな」
文庫本の棚を物色していた康太はそう言って、一冊の本を手に取った。貸出カードに自身の名前を書きながら、最近どうっすか、と蒼生に尋ねるのがお決まりだ。
「元気だよ。大野くんも元気そうだね」
「へへ、分かります? 元気っすよ~。俺も、クラスの奴もみんな」
「ん、そっか」
「っす! これでよし、先輩お願いします!」
「はい、たしかに」
「じゃあまた来るんで!」
「はーい」
康太が置いていったカードの、タイトルの部分をそっと指でなぞる。康太が借りていくのはいつもミステリー小説で、蒼生が気に入っているもので、それから、啓も好きそうだなと思えるものだった。
「クラスの奴もみんな元気、か。じゃあ啓くんも元気なんだろうな。よかった」
あれ以来、中庭で話して、一緒に帰る約束を反故にして蒼生が走り去って以来──啓と顔を合わせる事は一度もなかった。この図書室にも姿を現すことはない。
避けられているのだ。そんなこと蒼生はすぐに分かった。身長の高い啓のことなら遠くからでもすぐに見つけられる。けれど目が合えば、啓はそっと目を逸らしてどこかへ離れていってしまう。自分がした事を振り返れば仕方のない事だと思えた。
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