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第27話

「なにして遊ぶか決める時も、いろんな味の飴の中から好きなのとっていいよって言われた時も。あいつは自分では何がいいって言わないんです。みんなが決めた遊びをしたい、みんなが選んだ後に残った味がいい、みたいな。それが一番あいつにとってはよくて.......まあ言ってしまえば楽なんだろうなって思います。誰も傷つけなくて済むし。俺は、優しいあいつがそれで苦しくないならそれでいいってずっと思ってました。自分から遊びたいって言わないなら、俺が誘えばいいし」 「うん」 「だから、来る者拒まず去る者追わず、って言うんすかね? そういうところがあって。中学の時に二~三人くらいに告られてたんすけど、よく知らない子でもいいよって全部オーケーしてて」 「っ、へぇ、そうなんだ」 「っす。でもすぐフラれちゃうんです。なんでだと思います?」 「え、なんで、だろう?」  啓を好いて恋人になれた人が、その特別な関係を自ら捨てる理由。そんなの考えてみても蒼生にはちっとも分からなかった。啓は、蒼生にとって誰より特別な子だから。 「んー、全然分かんないや」 「湯川先輩さすが」 「ふふ、さすがってなに」 「先輩は分かってる、って意味っすよ」  和ませようとしてくれているのだろう、おどけたように話すその康太の口ぶりに、蒼生は救われるような気持ちになる。 「理由は、何もしてくれないから、って。別れる時には決まってそう言われたらしいっす」 「何も、してくれない?」 「はい、つまらないって。ユウはユウなりに、恋人って何すんだろう、って考えたりしてたんすけどね。伝わらなかったって言うか、行動がいつも遅かったって言うか? まあ女子たちもユウの何見て好きになったんだって思うし、ユウはユウで好きってわけじゃないのにオーケーするから良くなかったんすけど。そんなんばっかで懲りたのか、モテるのにパタリと誰とも付き合うなんてしなくなって。恋愛に置いてはそうなったけど、より一層受け身に磨きのかかった結木啓の誕生っす」 「そうだったんだ」  俺はまあ、アイツらしい優しさのかたまりみたいなもんだから、そんなとこもいいって思ってますけどね──康太はそう言う。話を聞いていて蒼生もそう思った。それなのに、彼はすぐフラれてしまう。意気消沈した啓を思い浮かべると、まるで自分の事の様に蒼生の胸は痛んだ。恋でつく傷は深く残る。蒼生だってそうだから。

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