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第33話
「あのね、啓くん」
「ん。なぁに」
「この前の……えっと、最後に中庭で話した時。あの時のことずっと謝りたかった。こんなに遅くなっちゃったけど。啓くんの話遮って、逃げるみたいに帰ったりしてごめんね? 啓くんのこと傷つけた」
「え……違う。ごめんねは俺だよ。困らせるって分かってたのに言っちゃったから。悪いのは俺。俺もずっと、謝らなきゃって思ってたのに言えなかった。ごめん」
「啓くん……啓くんはやさしいね、ありがとう。でもやっぱり、僕がいけないんだよ」
「そんなことな、」
「本当に、そうなんだ。俺が臆病だから。怖かったんだ」
「こわい?」
「うん。ね、啓くん。もしよかったらこっち、座ってくれる?」
蒼生は自分が座っている隣のスペースをぽんぽん、と手で示した。啓はこくりと頷いてそこに座り直す。
ほんの少し空間が空いていても、隣に啓がいる。それだけであたたかくて、何でも言えそうな気がする。
「付き合ってる人がいたんだ、中学の時。あの頃の僕は……その人が本当に大切だった」
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