33 / 44

第33話

「あのね、啓くん」 「ん。なぁに」 「この前の……えっと、最後に中庭で話した時。あの時のことずっと謝りたかった。こんなに遅くなっちゃったけど。啓くんの話遮って、逃げるみたいに帰ったりしてごめんね? 啓くんのこと傷つけた」 「え……違う。ごめんねは俺だよ。困らせるって分かってたのに言っちゃったから。悪いのは俺。俺もずっと、謝らなきゃって思ってたのに言えなかった。ごめん」 「啓くん……啓くんはやさしいね、ありがとう。でもやっぱり、僕がいけないんだよ」 「そんなことな、」 「本当に、そうなんだ。俺が臆病だから。怖かったんだ」 「こわい?」 「うん。ね、啓くん。もしよかったらこっち、座ってくれる?」  蒼生は自分が座っている隣のスペースをぽんぽん、と手で示した。啓はこくりと頷いてそこに座り直す。  ほんの少し空間が空いていても、隣に啓がいる。それだけであたたかくて、何でも言えそうな気がする。 「付き合ってる人がいたんだ、中学の時。あの頃の僕は……その人が本当に大切だった」

ともだちにシェアしよう!