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第41話
「蒼生先輩、これ……貰ってくれる?」
「ん? なぁに? えっと、開けてみてもいい?」
「うん」
手のひらサイズの薄い包みを、蒼生は丁寧に開けてゆく。あぁ、ラッピングも自分でやってみればよかったな、と薄らとした後悔が啓に浮かぶけれど、それを吹き飛ばすほどの衝撃が静かに訪れる。中身を取り出した蒼生が、頬をまるく紅潮させ息を飲んだ。
「しおりだ……しかも僕の名前が刻印してある。啓くん、これ……」
「しおりって使う?」
「うん、使うよ。でも、どうして?」
「よかった。それは、」
一年の廊下を歩いている時、『微笑みの貴公子が、』と話していたのはどの女生徒たちだったか。合わせて聞こえたワードに慌てて踵を返し、それはいつなのだと啓は詰め寄った。呆気にとられながら『十二月の……』と教えてくれた彼女たちにありがとうと告げ教室に飛んで帰って、康太にどうしても行きたいところがあるから放課後のゲーセンはやっぱりパスと言えば、康太は目を丸くしながらも『湯川先輩か?』と口角を上げた。それももう一ヶ月ほど前で、渡せるかどうかもそもそも分からなかったのに、何もせずにはいられなかったのだ。
「蒼生先輩、誕生日おめでとうございます」
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