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第42話

「へ、あ……知ってたんだ」 「ん。渡せてよかった」 「啓くん……」  蒼生の両手に包まれて、啓が贈ったしおりが夕陽を受けてキラリと光る。  春を思わせる淡い桃色とやさしいブルー。グラデーションに混じりあうそれに蒼生と自身の名前を見出した。そんな事恥ずかしくて言えそうにないけれど、二時間ほど迷った末にそれを見つけた時、啓は「これだ」と思ったのだ。 「啓くん、ありがとう。すごく嬉しい……大切にするね。使うのもったいないな」 「えー、使って?」 「うん、そうだね」  蒼生は淡く頬を綻ばせ、しおりをきゅっと胸に抱きこむ。その仕草に音を立てながら、啓の胸は蒼生が好きだと鼓動を打つ。 「蒼生先輩」 「ん?」  啓は蒼生と目線が合うように、窓枠にゆるく腰を預ける。蒼生の腕をそっと引くと、戸惑いに一瞬体を跳ねさせながらも、啓に近づいてくれた。熱いため息が鼓動のうるさい啓の胸から零れる。叶った恋にどうしたらいいか分からない。けれど何か、と願う。この人のために、自身の気持ちで出来る何か、を。

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