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(さとる)、いる?」 家庭科準備室のドアを開けるとまず、ピンクのカーテンが現れる。家庭科室と同様、着替え室として利用することもあるこの部屋は中を見られないようにカーテンで区切ってあった。 しかし、普段、ここは授業で利用することはない。主な利用者といえば家庭科担当教師と一部の部員のみだ。 オレはカーテンを潜り、ドアを閉める。だが、そこにはまだ誰もいなかった。 (まだ終わってないのかな) 「しかし、メイド姿か〜」 備品が入っている棚の近くにパイプ椅子があり、そこに座って待つことにした。 今年は人間界(こちらの世界)に来て初めての文化祭。 オレ……吸血鬼『キョウスケ・ディビッド・ブラッドベリー』は人間男子高校生『柳 京介』としてここにいる。そのことを知るのは片手ほどの極一部の人間のみだ。 話が逸れた。吸血鬼が住む魔界でも給仕の者はいる。だが、階級の高い魔族しか雇えないところは人間と同じなのかもしれない。 さっきの女子が着ていたメイド服は、最近テレビで観た『コスプレ』といった類なんだろう。 (聖が着たら……) 黒と白、フリルとリボンの服に身を包み、ふわっと膨らんだ袖やスカートから凛々しい小麦色の腕や脚が現れる。スカートとハイソックスに隠れたお肉はムチッとしていて、隠しきれない豊満な胸はさぞかしいい感触なんだろう。 (吸血はしなくてもいい。ただ、聖が気持ち良くなっているのを見るだけで大満足だ) そんな恋人のことを考えていたら、奥から声がした。 「聖?」 「きょ…京介、い、いる……のか?」 やっぱり聖だ。奥のドアから聞こえてくるということは、扉一枚で繋がってる家庭科室にいるんだろうか? 聖が近くにいると思っただけで心と体が軽くなる。そのままドアに体を密着させ、 「うん、いるよ。聖は今来たところ?」 オレの問いかけに対し、聖は応えない。その代わり衣服の擦れる音がドア越しに聞こえてきた。 (何をしているんだ?) 「さとーー」 扉がゆっくりと開く。途中止まったりもしたが、それでも開いていき、 「きょう、すけ……」 黒短髪に三白眼。幼馴染である聖は不安そうな顔でオレを見る。 震えた声で出てきた彼は黒いマントを全身に被っていた。何故か下半身はふわっと浮き上がっている。 「どうした、聖?寒いのか?」 聖は凛々しい身体とは反対に昔から風邪を引きやすい。秋の風が肌にひんやりと触れる季節だ。 (それともーー) オレの指先が肌に触れようとすると、聖は一歩後ろに下がる。

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