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6粒目

「岩佐!? おい、大丈夫か!?」  慌てた和巳に抱き起こされ、体中に雷のような衝撃が走った。 ドクンドクン。全身が心臓になったみたいに脈打つ。 触れられた部分から痺れるほど甘い疼きが生まれた。 「ハア、ハア……なんだ、これ」 「この匂いは……っく、発情期だな」 「え……発情、期?」  喉がカラカラに干上がる。熱い、欲しい、もっと。 この腕でめちゃくちゃにして欲しい。 目の前がチカチカして欲望に支配される。これが発情期……。 堪らず和巳にしがみつき、夢中で唇を押し付けた。 「んっ!? 岩佐……!」 「はあ……んむ、んんぅ……」  キスなんてしたこともないのに、突き動かされるまま舌を絡め、柔らかな粘膜を舐め回す。 唾液が砂糖菓子のように甘い。 クラクラするほどの快感が全身へと広がった。 「岩佐、落ち着け……んっ…こら、向こうに抑制剤が」 「や、イヤだ、薬いらない、アンタが欲しい……!」  抵抗されて涙がボロボロ零れ落ちる。 朦朧とした意識で白衣の合わせ目に手を伸ばし、膝の上に跨った。 尻を揺らして男の中心に擦りつけると、和巳が眉を寄せる。  フェロモン全開のΩに襲われればαの彼はひとたまりもない。 瞳の奥にじわりと欲望が滲んだのを棗は見逃さなかった。 「なあ、しろよ……アンタのものに。……な、シて、先生」 「っくそ、もう、知らないからな……!」  縋り付いて懇願すると、彼は険しい顔で棗を抱き上げ、ベッドに放った。  一回り体格の大きな男に組み敷かれた棗は、ぐずぐずに蕩かされ、感じるままに啼いた。 お願いだから項を噛んでくれ。 奥を穿つ熱に翻弄され、何度も何度もうわ言のように繰り返すと、フェロモンに屈した和巳は請われるまま棗の項を噛んだ。  Ωの強烈なフェロモンは意志を無視して強制的にαを従わせてしまう。 嵐のような情事を終え、冷静な頭で己のズルさを反省していると「責任はとるから、岩佐はなにも心配するな」と真面目に告げられ首を傾げた。  無理やり番うことを強要された人間に、責任もなにもあったものではない。 気に入らなければαは番を解消できる。 どうせ他のαに興味はない棗だ。 番を解消したせいで一生恋愛ができなくなったって構わない。  そう覚悟していたのに、和巳は棗の卒業を機に同居を申し出たのだった。

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