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抱いて 濡れて 溺れて 8

今日は本当に寒くて、体は着物のおかげで厚着なので大丈夫だけど、手がかじかむくらいに冷たくなっている。 思わず自分の息を手に吹きかけていると、右隣に立っていた悠貴さんが、不意にボクの右手を左手で掴んで、そのままコートのポケットに突っ込んだ。 「ゆ・・・悠貴さん?」 「寒いだろ・・・手、冷たい」 「あり・・がとうございます・・」 温かい。 悠貴さんの体温が、手から、ポケットの中から這い上がってきて、恥ずかしくて、嬉しくて。 泣きそうになる。 雪でも降りそうなくらい寒いのに、だんだん熱が体に回ってきて、顔も熱くなってきた。 きっと、顔、真っ赤なんだろうな。 繋がれた手の温もりに浸っていると、 「薫、そっちの手も寒いだろう」 そう言って悠貴さんが、繋いでいない右手で手袋をボクに差し出した。 見ると、右手は黒い皮の手袋をはめていて、差し出しているのはその反対の左手のものだった。 「え・・・手袋持ってるなら、悠貴さんして下さい。ボクは大丈夫ですから」「いや・・そうじゃなくて・・」 「本当に、大丈夫ですから」 ボクが繋がれた手を放そうと引き寄せようとすると、悠貴さんが、ポケットの中で強くボクの手を掴んだ。 少しイライラしたように、軽く溜息をつくと、 「違う。・・・薫と手を繋ぎたいから手袋しなかったんだ・・・少しは察しろ」 「ふぇっ・・・あの・・・すみません・・・」 困る。 悠貴さんって、こういう恥ずかしいことをたまに言うから、本当に困る。 嬉しくて。 恥ずかしくて。 でも嬉しくて。 どうしたらいいのかわからなくなる。

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