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抱いて 濡れて 溺れて 9

悠貴さんは、差し出した手袋を引っ込めようとせず、ボクに左手を出すように促すと、右手だけで器用にはめてくれた。 ボクには大きい手袋。 指も長くて先がぶかぶかで、手の平の部分も大きくて手首までかかってる。 全身が、悠貴さんで包まれているみたいだった。 ボクはそのサイズの違いが何だか嬉しくて、手袋をはめたまま巾着の紐を握りしめた。 列が少しずつ移動する。 二つ目の大きな瀟洒(しょうしゃ)な門を潜ると、列の向こうに本堂が見えてきた。 参道に並んでいるのはボク達みたいに参拝する人逹で、参道の横には出店が並んでいて、そこにも多くの人が行き交っていた。 初詣なので、女性の晴れ着姿が多く目につく。 やっぱり女性が着た方が華やかで、綺麗で、可愛いな。 同じ顔なのに、美影ちゃんのほうが似合ってたし。 やっぱり普通の洋服に着替えれば良かった・・・。 軽く溜息をついた時、悠貴さんがボクを覗き込むように見て、小さい声で、 「大丈夫。薫が一番可愛い」 と、ボクが考えていたことを言い当てて、びっくりした。 「え・・?!・・・いえ・・何で・・」 悠貴さんは、面白そうにくすくす笑う。 「薫が何を考えてるか、表情とか言動で全部わかるよ」 「そんな・・・わかりやすいですか?」 「ああ。オレにはわかるよ」 「うっ・・・・」 そういえば美影ちゃんにも同じことを言われた気がする・・・そんなに露骨なのかな・・・。 気をつけよう・・・。 思わず反省して俯いてしまう。 悠貴さんはそんなボクを楽しそうに見つめたまま、ポケットの中の手を一瞬強く握った。

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