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抱いて 濡れて 溺れて 11

* その後、都心へ戻る道中で見つけたファミリーレストランへ入って、食事をした。 と言っても、ボクは帯が少し苦しいしお節を少し食べていたから、サンドイッチだけで済ませた。 悠貴さんが定食を食べてお腹を満たすと、早々にお店を出て車に乗り込む。 本当はもっとゆっくりしたかったけど、悠貴さんが疲れていることもあるから、ボクは我儘を言わないようにした。 車は国道を走る。 流れる景色を横目にボクは悠貴さんの横顔を、そっと見つめる。 高い鼻筋も、漆黒の髪も、全部が格好良い。 そんなボクの視線に気づいたのか、悠貴さんが口を開いた。 「薫・・・」 「はいっ」 「このままウチに来ないか?」 「え・・・でも・・・」 行きたい。 本当は悠貴さんと離れたくないから、ずっと傍にいたいから、悠貴さんの部屋に行きたい。 でも。 「悠貴さん疲れてるでしょう?ボク」 「疲れてるから、一緒にいたい。薫に傍にいて欲しい」 ボクの言葉を遮るように、悠貴さんが強い口調で言った。 運転中だから前を見たまま、それでもボクは悠貴さんに見つめられているような感覚になる。 傍にいて欲しいと、言ってもらえて嬉しい。 ボクと同じ気持ちなのが、すごく嬉しい。 抱きつきたい衝動を抑えながら、ボクは、 「わかりました・・・ボクも離れたくないです・・・」 と、素直な気持ちを口にした。 悠貴さんが、ほっとしたように肩を下ろして、微笑んだ。 まだ付き合い始めた頃は、恥ずかしくてあまり気持ちを口にすることができなかったけど、5ヶ月経って少しずつ言うことができるようになった。 悠貴さんがボクを好きでいてくれるから。 少しでもボクの気持ちを届けたいから。 車がよく知っている道を走っていた。 悠貴さんの部屋へと向かっている。 道路沿いにコンビニがあったり、チェーン店の喫茶店があったり。 何個もマンションが並んでいたり。 もう何度もこの道を通っているので、覚えてしまった景色だった。 マンションの地下駐車場へ入り、車を止めると、悠貴さんは車を降りた。 ボクも降りようと鍵を開けた時に、ドアがすっと開いて、悠貴さんが手を差し出してくれた。

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