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抱いて 濡れて 溺れて 13

サーバーからコーヒーがゆっくりと抽出されるのを眺めながら、悠貴さんが不意に口を開いた。 「そういえば、薫は神社で何をお願いしたんだ?」 「ふぇっ・・・それは・・・その・・・」 「何?」 「お、教えません。人に教えたら願いが叶わないって、言うじゃないですか」 「そうだっけ?」 悠貴さんがくすくす笑いながら、ボクを楽しそうに見ている。 ボクが何をお願いしたのか、わかってて、揶揄(からか)ってるんだ。 「・・・意地悪」 悠貴さんに聞こえないように、ぽつりと呟いた。 「ずっと・・一緒にいられるように、お願いしたに決まってるじゃん・・・」 「ん?何か言ったか?」 「いいえ!何も言ってないです」 悠貴さんがマグカップを二つ持って来て、ボクの隣に座った。 「はい。熱いから気を付けろよ」 「ありがとうございます」 ボクはマグカップを受け取る。 ボクがお揃いで買ってきたマグカップを使ってくれている。 ただの白いマグカップだけど、取っ手の所がハート型になっていて、ゴールドとシルバーの二つを買ってきた。 悠貴さんには似合わないけど、可愛いから買って来ちゃった。 悠貴さんは、少女趣味だと笑いながら、それでもこうして二人でいる時は、使ってくれる。 ボクはコーヒーを一口飲んだ。 苦いのが苦手なので、ボクはいつも砂糖とミルクを入れて甘くする。 悠貴さんは覚えてくれて、自分のはブラックで、ボクの分は甘くして淹れてくれる。 悠貴さんの優しさと、愛情を感じながら飲むコーヒーは、冷えた体を温めてくれた。

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