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抱いて 濡れて 溺れて 22
お父さんは、持っていた鞄をキッチンから出てきたお母さんに渡すと、少し緊張した面持ちで、魅華ちゃんとは向かいのソファに座った。
いつもだったら、すぐにスーツを脱ぐのに、今日は何故か脱ごうとしない。
それについて魅華ちゃんも、戻ってきたお母さんも何も言わず、黙ったままキッチンへ戻った。
「薫・・・何だか、異様な雰囲気ね」
美影ちゃんが座り込んだまま、ボクの部屋着のスウェットを引っ張って、小さい声で言った。
「うん・・・何か変だね・・・」
「5人全員集めて・・・お父さんは何考えてるんだろう?」
「さあ。ボクは何も聞いてないけど」
「私も。ただ家にいろって」
ボクと美影ちゃんが顔を見合わせて、同時に小首を傾げた時。
ピンポーン。
と玄関のチャイムが鳴った。
「来た」
お父さんがぼそりとそう呟いた。
お母さんが慌ててキッチンから玄関へと向かう。
魅華ちゃんが愉(たの)しそうに微笑んで、長い綺麗な足を組む。
ボクと美影ちゃんはバカみたいに寄り添ったまま、動かないでいた。
しばらくすると、お母さんの声が聞こえて来る。
どうやらお客さんと挨拶を交わしているらしい。
声が近づいてきて、リビングのドアが開いて。
お父さんが勢い良く立ち上がる。
魅華ちゃんもそれに習って立ち上がった。
座ってきょとんとしていた美影ちゃんも、つられて立ち上がる。
ボクの腕に、不安そうにしがみつく。
「どうぞ、こちらへ」
お母さんがそう言いながら、ドアを潜(くぐ)って、後ろにいる人へ話しかける。
何だかよそよそしいから、あまり付き合いのないお客さんなのかな。
「有難う御座います」
ん?
何だか・・・よく知ってる声が・・・。
お母さんの後をついてきたのは、間違えようもなく、悠貴さんだった。
ダークグレーのダブルのスーツを着て、黒いネクタイをして。
ボクの大好きな人だった。
「ふぇ・・・っ?!悠貴さんっ?!」
「ああ〜〜〜〜っっ!!色欲変態強姦魔っ!」
ボクと美影ちゃんの声が重なる。
美影ちゃんに至っては、仇(かたき)とばかりに指を差している始末だった。
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