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第7話「まさかお前が」
(最悪だ……入学してここまで順調だったのに)
あのわけの分からない眼鏡に俺は初めてケンカで負けた。
それだけで死にたいくらい最悪なのに、あいつは「俺の犬になれ」とまたふざけた事をぬかし俺にフェラをさせやがった。
(ほんとに最悪だ……思い出すだけで吐き気がする。この俺があんなやつに……)
「新 おっすー!」
「おう…」
こんな最悪な気分でも学校は毎日やって来る。
クラスメイトのダチが朝の挨拶をしてくるが、今は機嫌が悪いから軽く返した。
「何? なんか今日元気なくね?」
まぁ、もろオーラに出してるから当然のように気づかれる。
「べつにー。つか、なんで今日はこんな騒がしいんだ?」
今日は朝からクラス中がざわざわと騒がしかった。特に女子。
いつもは薄化粧の女子とかも今日に限って濃い化粧になってたし。
(女子はすっぴんがいいと思うんだけどな)
「んー、なんか生徒会から緊急報告があるみたいでさー」
ダチが言った生徒会という言葉に内心ギクリとする。
あの眼鏡が、生徒会長がどうとか言ってたし…。
「ふーん……そんだけなのに女子はなんでこうキャピキャピしてんだよ」
「なんでもその生徒会長と副会長がイケメンらしくてさー。狙ってる子結構いるらしいぜ? 少しでも気合い入れておきたいんじゃね?」
「へぇ〜」
確かに入学式の時一回だけ生徒会長見たけど、言われてみれば綺麗な顔してたな。
「おっ、そろそろ時間じゃん! 行こうぜ」
ダチに言われて席を立つ。
(朝っぱらからこんなめんどくさい呼び出しやがって)
早く終わる事だけを祈り教室を出た。体育館に着くと、やっぱりほかのクラスの女子もいつもより化粧に気合いが入っていた。1年だけでなく全学年の女子が。
逆にそこまでできる事が素晴らしいと思えるくらいだ。
そんな事を考えながら周りをキョロキョロ見渡していると、周りの女子がざわつき始める。
例のイケメン生徒会長のご登場かと思い顔を上げるとドクンっと心臓がいやな音を立てた。
『みなさん、おはようございます』
低くて濁りのない声がマイクを伝い体育館に響き渡る。
壇上に現れたのは、昨日の男。
「今日は上城 先輩だっ」
「いつにも増してかっこいい」
周りが盛り上がる中、俺の心臓の音は速さを増していく。
(なんでお前がそこにいんだよ……つか、なんだよその笑顔は昨日と全然キャラ違うじゃねえか…っ)
『えー、今日は生徒会長の月島 に代わり、副会長の私からみなさんにご報告したい事があります』
(なっ、副会長⁉︎ 嘘だろ……あいつ生徒会だったのかよっ)
正直生徒会なんか興味がなくて誰が所属してるかなんてまったく知らなかった。
でも、今はそれをひどく後悔している。
いやな汗が背中に流れる中、ごくりと生唾を飲む。
『突然ですが、現在の成績上位者の中から、生徒会に推薦したい方がいます』
そのひと言で周りがまたざわめく。
やがて静まったあと、眼鏡は全校生徒が集まるこの場所で真っ直ぐと俺を捉え、口を開いた。
『1年B組の渋谷新さん』
名前が上がると周りの注目が俺に集まる。
どうか聞き間違いでありますようにと願うも虚しく、後ろのダチがやったな!と背中を叩いてきて現実を突きつけられる。
俺は突然の出来事に言葉が出てこなかった。
胸くそ悪りぃ眼鏡と目が合う中、にやりと口角を上げる瞬間を俺は見逃さなかった。
『あなたを生徒会書記に推薦します』
ほんとにこいつは何を考えているんだ――
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