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第10話「お願いします」
「んぅっ…ん、んん‼︎」
眼鏡に拘束され逃げる術も、助けを呼ぶ間もないまま、俺はまたキスをされた。舌を絡め取られ、ヂュ、と吸い上げるこいつのキスに全身の力を奪われる。
頭の中が真っ白に溶けてしまいそうになるくらいに、ねっとりと、濃厚なキス。
「新 …」
唇を離されると、酸素を目一杯吸い込む俺を見下ろしながら、眼鏡はニタリと笑う。
そして何を血迷ったのか服の中へと手を入れてきた。
「はっ⁉︎ な、何してんだよっ」
「んー、乳首触ってる」
胸に到達し、乳首を探し当てられる。抓まれた瞬間背筋がゾワリと震えた。
「てめっ…俺は女じゃねえっ‼︎ やめろっ…うあっ」
バタバタと足をばたつかせて必死に抵抗したけど、足でがっちりと固められてすぐ動けなくなった。
「ふざけ…ん、なぁ…あっ」
いやがる俺なんてお構いなしに眼鏡は楽しげに乳首をクリクリとこね始める。
指先で扱われ、強く引っ張られたり弾かれたりされる内に、体の熱がだんだんと上昇していく。
「…乳首勃ってきたけど」
「黙れっ…てめ、が…うぁっ」
体がビクビクする。次第に湧き上がってくる快楽が怖くなる。
こんな感覚知らない。
「ん? 誰が?」
「っ、く、そ…眼鏡っ…」
ガクガクと震える体を必死に堪えようとするが、初めて味わうその感覚に体は素直に反応していく。
(乳首触られて気持ちいいとか…絶対にあり得ねえ…こんなのおかしい)
「ほんと、口悪いよね」
スッと離れていく手にホッとするも束の間。眼鏡は俺のズボンのベルトに手をかける。
「お、おい…何してんだよ…」
自分の顔が青ざめていくのがわかった。そしてこいつの次の行動を読み取った俺はまた足をばたつかせた。
「知ってると思うけど、俺、先輩」
「だから……なんだよ?」
眼鏡は警戒する俺の顔を見てふっと真っ黒い笑みを見せる。
「だから、まずは敬語使おうな?」
ベルトを外されズボンを脱がされ、下着の中に手が侵入してきた。大きな手で性器を掴まれドッと心臓が跳ねる。
「な、やめっ」
「ほら、もう勃ってる。ほんとは俺に触られて気持ちいいんだろ?」
「ちがっ…ひ、…」
シャツをたくし上げられ、乳首に吸いつかれると体が仰け反る。必死に引き剥がそうと抵抗するが、力が抜けてどうにもならない。
チュ、っとわざとらしく音を立てながら胸を吸われ、更には性器を上下に擦られ卑猥な音が保健室に響いた。
「あ、あっ…いや、だ…も、やめ…眼鏡っ…」
「もう限界? お仕置きはこれからだよ」
(ほんとにこいつは頭おかしいんじゃねえのか⁉︎ 俺は男だぞ…こんなことして許されるわけねえっ)
「新…」
「痛っ‼︎」
眼鏡が俺の名前を呟くと同時に胸に激痛が走った。
目の前がチカチカして、痛みに耐えながらゆっくりと視線を落とすと左胸に噛みつく眼鏡とバチリと目が合う。
「へぇ…お前痛いに感じるんだ」
真っ黒なこいつの笑顔はまさに悪魔だ。
こうも人間って裏表あるのかよと涙を堪え、俺はひとつの確信を得る。
こいつは人間じゃない――
「ま、満足したならもういいだろっ…やめろよっ」
「やめる? こんなグショグショなのに? それに全然満足してないんだけど。お前もそうだろ? ほらここ…」
「うっ…あ」
「お前が素直にならねぇとずっとこのままだけど?」
「っ…くそ、が…変態眼鏡っ」
「いいね。お前のその反抗的な目…ゾクゾクする」
甘い声で囁きながら、耳の中に舌を入れられ中を侵される。鼓膜に響く恥ずかしい音にビクビクと体が痙攣する。
もうわけが分からなくなって、こんなのいやなのに、体は早くイキたくてたまらなくて。
「ほら……早く言えよ。ちゃんと敬語で言えたらイカせてやるよ」
「っ…う…くっ」
「ほら、かわいらしく強請ってみろよ」
(くそっ……いつか…いつかこいつを殺してやる…)
「…お、お願い…っ…します…」
「成海 。成海先輩」
まだ足りないと、そう目で訴えるこの眼鏡悪魔。
「お願い、します…っ」
俺は絶対にこいつを許さない。
「成海…先輩…」
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