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第12話「すべてを奪われる」

何を血迷ったのか、眼鏡はとんでもない事を口にした。 「なぁ…」 ケツの割れ目に熱くて硬いものが()てがわれる。擦りつけられると体がガチガチと震えた。 「やめっ」 眼鏡は暴れる俺の足を抑え込み、無理やり中に入ってくる。 「いっ、痛てえって‼︎ おいっ、や…」 「暴れると痛いって」 (何が『挿れていい?』だっ…結局俺の意思は無視かよっ…) 「いっ…いた…」 ぎゅっとベッドのシーツを握り締めるが、痛みがそれで和らぐわけもなく、俺の両膝に手を置くこのくそ眼鏡は楽しそうに笑みを浮かべながら俺の中に容赦なく侵入してくる。 腹が引き千切られそうな感覚に陥った。痛くて、苦しくて、目の前が暗転を繰り返す。 「息吐けよ…ほら、もうちょっとだから」 吐息を漏らしながら眼鏡はグリグリと腰を打ちつけてくる。 息を吐けなんて言われたって、苦しいんだから上手くできるわけがない。 「もっ…抜けっ、て…」 ケンカの時、どれだけ殴られようが平気なのになんだこの痛さは。 (こんなの…味わった事ない…) 「泣いてんの?」 「っ、誰が…」 (ムカつく…ぶん殴ってやりたい…この俺にこんな事しやがって…) 「ああ…やっぱその目イイな」 ギッと睨みつけると眼鏡はにやりと笑った。 そしてその瞬間、眼鏡の全体重が伸し掛かってくる。 「ひぁっ、ああああっ‼︎」 ズブッと奥まで腰を突かれると体に電気が流れた。 「あっ、う…う、くっ…ひ…」 休む事を許さず、眼鏡が一定のリズムを保って腰を突き始める。声が掠れて、目の前がチカチカして、それでも湧き上がる快楽に理性も何もかも持って行かれる。 「や、動く、な…あっ…ほんとに、もうやめっ」 「ここでやめたら俺ひどいやつになるじゃん」 「い…や…あっ」 保健室に肉と肉がぶつかり合う音が響く。誰かに見られたら俺は終わりだ。そもそも、このくそ眼鏡にさえ捕まらなければ…俺は今まで通り平凡な学生生活が送れてたんだ。 俺は真っ当な人間になりたかっただけなのに…どうして男に犯されなくちゃいけないんだ―― 「ほら…お前のも擦ってやるよ」 「やっ、ああっ…‼︎」 (俺が一体何したって言うんだ…っ…からかって遊びたいだけなら…俺じゃなくても良かっただろっ…) 「(あらた)……」 そう、頭では思うのに―― 「イキたい?」 こんなの最悪だって思うのに、どんどん、どんどん…気持ちいいと感じてしまう自分が顔を出して、目の前が涙で揺らいでもう何がなんだか分からない。 「イ、イキたいっ……」 ()退()けなくちゃならないのに、そう口にしたらくそ眼鏡の思う壺なのに。 「っ…なら…どうしてほしいか言えよ…」 両手を抑えられ、自分でする事はできない。嗚咽(おえつ)がこぼれる中、また奥まで突かれ体が跳ね上がった。 (もう限界だ……) 「もっと、俺、の……して…」 「何? 聞こえない」 嘘だ。この状況でそんな嘘言うなんて…こいつはやっぱり悪魔だ。 「強く…擦って…擦って……」 「、だろ?」 もうなんでもいい。なんでもいいから早く楽になりたい。 「擦って…イカせてくださ…い…」 ボロボロと涙が溢れる中、精一杯強請ってみせると、くそ眼鏡は満足気に笑った。 上下に性器を扱かれカリを親指で弾かれる。頭の中がふわふわして何も考えられなくなる。 「このまま出すけど…いいよな?」 眼鏡が何を言ってるのかよく聞こえなかった。 腰を打ちつける音が速さを増し、最後のひと突きで眼鏡は体を倒し俺に抱きついてきた。 眼鏡の肩が震え、ドプっと俺の中にこいつが吐き出した精液が入って来る。こいつと同時に俺も気がつけばイってしまっていた。 射精の余韻に浸りながら、息を整える眼鏡が俺を見下ろす。 不覚にも、その顔が綺麗だと思ってしまった。 「新…」 触れるだけのキス。 何も意味のないキス。 「…っくそ」 昨日、初めてケンカで負けた。 初めてキスをされ、初めて俺は男に犯された。

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