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第13話「あれは…」

悪夢のような行為が終わると、眼鏡は息を吐きながら俺の隣に倒れ込み、しばらくして俺の中に出した精液を()き出し始めた。 「なっ、自分でする!!」 「いいよ。俺するから」 さっきまでとは打って変わり、優しい声の眼鏡はその後手際よく俺の体を綺麗に拭いてくれた。 あまりにも優しいもんだから、逆にそれが腹立つ。 どうせなら、最後まで優しくすんなっての。 「もういいだろ…手(ほど)けよ…」 「あぁ、そうだな」 縛られていた手がようやく解放され、一秒でも早くこの場から立ち去りたかった俺はすぐに体を起こした。 (腰痛え…あとケツん中…ほんとに最悪) 体中あちこち痛くて、立ち上がるのもやっとな状態。 眼鏡に対して苛立ちが積もる中、ベッドから降りようとした時だった。 「いっ!?」 いきなり目の前に眼鏡の腕が現れたかと思えば、そのまま腕を首に回されまたベッドに倒れ込んでしまった。 「何すんだよっ」 「俺のここ、お前のでこんななってんだけど?」 眼鏡が自分の腹を指さし、俺に顔を近づける。そこには俺が飛ばしちまった精液が。 「じ、自分で拭けよ」 素っ気なく返すと、眼鏡はニタリと笑った。 「舐めて」 「はっ!?」 「俺もう疲れたから。(あらた)が舐めて綺麗にしてよ」 事後だからなのか分かんねえけど、眼鏡は火照ったように顔が赤くなっていた。 浅い吐息と高揚する眼鏡の顔、甘いにおいが増す中、目を細めて笑うこいつのフェロモンはやばい。 こいつはほんとにどこまでもムカつく。なんて色気ムンムンの声で言ってくんだ。 (なんつぅ顔して俺の事見んだよ……) 「早く」 「っ……」 従う義理なんかねぇのに、こんな事俺がやる必要なんてねぇのに、眼鏡の言葉に体が勝手に反応する。 言われるがまま眼鏡の腹に手をつき、ゆっくりと顔を近づける。チロリと舌を覗かせ自分が出した精液を綺麗に舐めとった。 「上手上手…」 すると眼鏡は、優しい声でポンポンと俺の頭を撫でてくる。 ほんとに俺は、こいつという人間が分からない。 「終わったんだから手ぇ離せ」 そう言っても眼鏡は俺に体を向けたまま動こうとしなかった。 「なぁ新、このまま寝ちゃおっか」 「はっ!? ふざけんな!! 次の授業があんだろ!!」 「いいって」 「俺は行く。お前ひとりで寝てろ」 ふん、と吐き捨ててやると、眼鏡は俺の顔をじっと見つめてきた。 「な…なんだよ」 「新って真面目だよな。写真の時とは正反対じゃん。煙草も吸うくらいの不良がこうも更生するなんてねぇ」 ニヤニヤと笑いながらそう言ってくる。 「お前、ひとつ勘違いしてんぞ」 「……?」 確かにあの写真は俺が一番荒れてた時の写真だ。ダチだって煙草も吸ってたし酒も飲んでた。 でも―― 「俺は煙草なんて吸ってねえし、酒も飲んでねえ」 言い切ってやれば、眼鏡は少し驚いた顔を見せた。 「でもあの写真では煙草(くわ)えてたじゃん」 「あ、あれはな…」 俺にとっての黒歴史。今となっては遠い記憶だ…。 「あれは?」 「っ……」 言葉を詰まらせると、眼鏡は不思議そうに首を傾げた。 「…じゃが◯こだ」

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