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第14話「やっぱり」

(あらた)は下を向いてボソっと呟いた。 あまりに小さい声だったから片耳に手を添えてもう一度聞いてみることに。 「何? 聞こえない」 「だからっ…」 「だから何?」 問い詰めると、しつこいのが余程気に食わなかったのか新は勢いよく顔を上げ、これでもかと眉毛をつり上げながら目を見開いた。 「じゃが○こだよ‼︎」 そして大声で叫ばれ俺は一瞬キョトンとしてしまう。 けど、目の前で見たことないくらい顔を真っ赤にして怒っている新を見るとふつふつと笑いが込み上げてきた。 「ぶっ……な…なんだって?」 「て、てめえ聞こえてんだろ‼︎」 「全然…っ…も、もっかい言って?」 「っだからな‼︎ あれはクリームシチュー味のじゃが○こだよくそが‼︎」 ああ、道理で。写真だと小さくて見えなかったけど、咥えてたやつが白かったのはそういう事か。 (にしてもあの鷹中を占めてたトップが煙草じゃなくてじゃが○こって……) 「ちなみにダチは吸ってたけど俺が全員辞めさせたよ‼︎ ダチが吸ってたのはあの時の写真で最後だよ‼︎」 聞いてもないのに必死に説明する新の横で俺は笑い続けた。金魚みたいに顔を真っ赤にさせて、わけの分らないジェスチャーをされるとどうしても我慢できない。 「くくっ……」 「てめえ‼︎ 笑ってんじゃねえよ‼︎」 「いや……オチがじゃが○こはねぇだろ」 「――っ‼︎」 文字通り腹を抱えて笑っていると、新は拳を振り上げた。 「っ‼︎‼︎」 その直後、腹に一撃お見舞いされた。 さすが鷹中元トップ。馬鹿にされた時のパンチは、またひと味違うらしい。恐ろしいほどピンポイントに急所に当ててくる。 「じゃが○こ舐めんなくそ眼鏡‼︎」 そう吐き捨てると、新はそのまま保健室を出て行ってしまった。 「痛って…」 殴られた腹がズキズキと痛む。でも、昨日のタイマンの時はこんな痛み感じなかった―― (なんだよ、じゃが○こ舐めんなって……) ベッドに仰向けになると、今日のいろんな新の表情(カオ)を思い出す。 俺に睨みかかる強気な顔。 俺にもてあそばれてよがる新の顔。 俺に馬鹿にされて顔を真っ赤にして怒る新の顔。 「やべぇな……まじ面白い……」 あいつ結構怒ってたけど… 「やっぱ、じゃが○こはねぇだろ」 新、お前やっぱり面白いわ――

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