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第16話「久しぶりの再会」

今日はいつも以上に1日が長く感じた。 眼鏡のせいで最初の授業が出れなかったから、それを挽回しようと後の授業を張り切りすぎたせいか、それとも眼鏡にあんな事されたせいか…両方が原因だとは思うけど、今日は本当に疲れた。 6時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴ると、肩の力が一気に抜けた。椅子に座ったまま背伸びをしていると、ポケットの中の携帯が振動する。 (んだよ、また眼鏡か?) 差出人を見ると秋人(あきひと)だった。 眼鏡からじゃない事にひと安心し、メールを開く。 件名は『久しぶりに』 「 “今日の放課後、飯でも行かね?” か――」 そういえば、秋人とは卒業以来会ってない。特に今日はすることもなかったから、『いいよ。どこ行く?』と返信すると、すぐに返事が来た。 “ス○バ!(笑)” 女子かよ、と心の中でツッコミを入れておく。ス◯バなんてハイレベルなとこ俺たちには無理だと返信すると、また数秒後に返事が。 “ジョーダンだって‼︎ 駅前のファミレスでい?” 「ファミレスねぇ…ま、高校生が行くつったらファミレスが妥当か…“オッケー”っと…」 返事を送り携帯をポケットに仕舞う。 秋人とは中学で知り合った。今考えてみると、秋人が今までで一番長く連んでたダチかもしれない。 ケンカが強くて、明るいし、友達思いだし、俺と違って人付き合いもうまい秋人には自然と人が集まる。秋人よりケンカが強いっていう単純な理由で俺が鷹中のトップになったけど、実際は秋人の方が適任だったかもしれない。 「俺がケンカで負けたって言ったら、秋人(あいつ)はなんて言うかな」 俺は今まで誰にもケンカで負けた事なんてなかった。それは秋人も知っている。そんな俺だから秋人は俺について来てくれたのかもしれない。もしかしたら、俺が負けたって言ったら…。 (いや…驚きはするだろうけど、あいつはそんな事で俺の事見放したりするような軽薄な男じゃねぇ) 久しぶりに会う中学のダチ。楽しみなのと少し不安な気持ちを胸に抱きながら、放課後待ち合わせ場所のファミレスに向った。 「久しぶりだな(あらた)‼︎」 「お、おう…」 ファミレスの前には秋人の姿。俺を見つけると満面の笑みで駆け寄って来た。 「あれ、髪染めた?」 俺の知ってる秋人は茶髪だったのに、再会してみると赤髪になっている事に驚いた。 「あ、ああ…ずっと赤にしようかなーって思ってたんだ。俺の学校こういうのうるさくねぇからいいかなって……もしかして変か?」 「いや、似合ってるんじゃね?」 俺がそう言うと、秋人はうれしそうに笑ってみせた。 「んじゃ入ろうぜ‼︎ 話したい事山ほどあるんだよ」 秋人に連れられ、ファミレスの中に入る。 せっかくドリンクバーを頼んだのに、秋人が言ったように山ほど話題があって飲み物に口をつける暇もなかった。 「でさ、東高のやつらに呼び出されて行ったら相手5人いてさ。いや、勝ったけどね‼︎ 勝ったんだけどその後がめんどくてさ」 秋人は本当によくしゃべる。ほぼケンカの話だったけど。 「なあ、新は高校どうなの?」 突然のその言葉に、体に力が入る。 「ん?…な、何が?」 「だから、高校に入ってどうなの? まじでケンカしてねえの?」 「し、してねえよ」 「ふ〜ん……なんだあ」 ケンカ……いや、一度だけ。 「あー……一回だけした…な」 呟くと、秋人はストローから口を離し、目を輝かせながら身を乗り出した。 「何? どこの高校のやつ? 相手何人? 強かった?」 これでもかと言うくらいの質問ぜめに少し身が引ける。 昔から秋人はケンカの話になるとテンションが上がったもんだ…。 でも、やっぱり秋人には言っておかないと。 「同じ学校の一個上のやつ……で、眼鏡」 「眼鏡? お前が何かして真面目君を怒らせたのかよ。眼鏡つけてるやつは大概は根がやべえやつだぞ!」 あくまで思い込みだけどな、と大笑いする秋人を横目に俺はコーラをひと口飲む。 (根がやばい…ね。確かに、間違いではない) ひとしきり笑うと、秋人は「なんだ真面目眼鏡か」と腰を下ろしてまたストローに口をつけた。 どうしてか、手に汗がにじむ。 「なあ」 「ん?」 秋人はどんな反応をするのか…… 「俺がケンカで負けたって言ったらどうする?」

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