24 / 38

第24話「放課後の約束」

朝から本当に疲れた。 あいつに襲われそうになるわ生徒会長に会うわでほんとに精神が削られる。 「はーーーー」 長いため息が出た。 時間は8時過ぎ。まだクラスの半分も来ていない。大体、俺はいつも点呼が始まる5分前に登校するのが普通なのに。 こんな早くに来た事なかったからホームルームが始まるまで何すればいいのか分んねぇ。 いや、というよりみんな5分前が普通じゃねえの? 秋人(あきひと)が、「できる人間は5分前行動が普通だ‼︎」って言ってたし。 「秋人の野郎…嫌がらせメール送ってやる」 さきほど起きた「眼鏡かけてるやつの目は3じゃない事実」を思い返すと怒りが湧いてくる。 自席に着き、秋人に文句を言ってやろうと早打ちでメールを作成していると、教室の扉が開き誰かが入ってきた。 目をやると、教室に入ってきたのは大崎(おおさき)だった。 「おっす」 挨拶をすると大崎は肩をビクつかせ、しばらく黙って小さくおはようと呟いた。 (そんなビクビクしねえでいいのに) 「………まただ」 「…?」 その後、大崎は何かを呟いたけど、ほんと声ちっちゃくてちゃんと聞き取れなかった。 まぁ、どうでもいいけど。 まだ眠いし、点呼まで寝ようと思いそのまま机にうつ伏せになる。 朝からほんとに疲れた。 ◇◇◇ 「渋谷(しぶや)‼︎ 今日の帰りにみんなでカラオケ行かね?」 色々あったけど、そんなこんなで今日も1日が終わろうとしていた。 放課後ダチからカラオケに誘われたけど、眼鏡との約束を思い出し、少し返事に戸惑った。 「あー、行きてえけど」 もし眼鏡が言った事が本当なら、俺はこの後眼鏡に会わなくてはならない。 とは言っても、あいつの好きにさせるつもりはないけど、あの眼鏡の事だ。きっと約束を忘れちゃいないだろうし、ここで約束をすっぽかしたら後で何をされるか分からない。 悔しいけど、あいつに逆らったら俺は学校生活に終止符を打つことになる。 それだけは何としても回避したい。 「悪い、また今度な」 つか、なんであんなやつの為に俺が高校生活を縛られなくちゃなんねんだよ。 「でも行ったらぜってぇ何かされるな」 いやな想像しか浮かばない。行かなくちゃあいつがうるさいのは分かってっけど、中々椅子から立ち上がる事ができなかった。 いや、今日こそはあいつに言ってやるんだ。「俺はお前の犬じゃねえ」ってな。 でももしかしたら、放課後の事をあいつが忘れている…なんて事も奇跡的にあるかもしれないから、あいつからの呼び出しがあるまでは教室にいよう。 (……って、それって本当にあいつの犬みたいじゃ…) 「おっ‼︎ 渋谷ちょうどいいところに‼︎ この資料を生徒会室に運んでくれ‼︎」 「…え」 頭を抱えていると、最悪な事に担任に捕まってしまった。 断ろうとしたが、「次期生徒会っ‼︎ 期待してるぞ‼︎」なんて目をキラキラさせながら言われると断れなかった。 俺ってほんと…ツイテナイ。 「重い……」 その後、いくつもの束になった資料を渋々生徒会室に運ぶ事に。 放課後になって数十分経ったけど、眼鏡からの呼び出しはない。 まぁ、あいつとの待ち合わせ場所に「生徒会室」とは言われてないし、時間だって指定されてたわけじゃない。 あやふやな約束だったし、最悪すっぽかしても俺も用事して忘れてたっつったら、あいつも少しは分かってくれんだろ。 しめたと思い、資料を置いたら今日はこのまま帰ろうと生徒会室の扉を開けた。 その時だった。 「いっ⁉︎」 扉を開けた瞬間、壁のようなものにぶつかり持っていた資料が落ちる。 「遅い」 そして、頭の上から聞こえたその声。 「め……」 どうやら俺はとことんついてないらしい。 ぶつかったのは壁じゃなく、入り口の前で仁王立ちする仏頂面の眼鏡だった。 「眼鏡……」

ともだちにシェアしよう!