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第25話「“ドキッ”を返せ」

「な、なんでてめえがここにいんだよ⁉︎」 「は? 副会長が生徒会室にいたらダメの?」 冷静なツッコミをかまされ、忘れてはいけない事を思い出した。 そうだった。こいつ副会長だったわ。 普通に考えたらこいつが生徒会室にいるのなんて予想がついたかもしれないのに、俺の馬鹿。 やべえよ。全然こいつに吐き捨てる言葉考えてねえ。 動揺を紛らわせようと床に散らばった資料を拾うと、眼鏡は俺が手に持った資料を指さした。 「何それ?」 「さっき、村田(むらた)先生に頼まれたやつ」 俺がそう言うと眼鏡は「ああね」と呟き、一緒に資料を拾い始めた。そして俺のと合わせて机の上に置く。その後どうしたらいいか分からなかった俺はその場で棒立ち状態。 静かに帰ろうと思ったその時、眼鏡が俺の方に振り向く。 「俺、前にもさ5分以上遅れたらお仕置きって言ったよね?」 携帯を取り出した眼鏡は俺に送ったメールを表示させ詰め寄ってきた。続けて、メール見たかと聞かれ思い出した。 俺、散々眼鏡からの連絡の事を気にしてたくせに、携帯は教室のカバンの中だ。 「し、知らねえ。メール見てなかったし…」 俺の返事が気に食わないのか、眼鏡は目を細め俺に近づいてくる。 やばい。そう俺の中の赤ランプが点灯する。 「く、来るな」 「なんで逃げんの?」 「てめえがこっち来るからだろ‼︎ って、おわっ」 逃げようと後ろに下がると、拾い残した資料を踏んでしまい足が滑りそのまま倒れそうになった。 (やばい、このままだと頭打つ――⁉︎) 「っ‼︎」 ぎゅっと目を閉じた瞬間、 「っと……気をつけなよ」 「……め」 眼鏡に抱きとめられてしまった。 一生の不覚。 「は、離せ」 「まずありがとうじゃないの?」 「っ、う、うっせえ触んなきもい離れろ‼︎」 両肩を押して離れようと抵抗していると、眼鏡に抱き締められた。 「(あらた)」 何? 何この状況…なんで、抱き締められてんだ? 眼鏡のにおい、眼鏡の体温、眼鏡の鼓動が全身に広がっていくみたいだ。 「は…」 体が熱い―― 「くそ眼鏡っ、離せっ‼︎」 「うるさいよ」 「んぅ⁉︎」 こうなると分かっていたのに、俺はまたこいつに体の自由を奪われる。 抱き締められたまま、強引にされるこいつのキスに頭の中が真っ白くなっていく。 「ん、っぅ…」 逃げる俺の舌を捕らえ、絡めて、吸って、(もてあそ)ぶかのように口の中を犯される。 「はぁっ、」 「新」 ようやく眼鏡の唇が離れていったかと思えば、至近距離で名前を呼ばれる。 真っ直ぐと俺を見つめる眼鏡。 少しだけ胸がドキッとした。 「い……」 いやいやいや、何? “ドキッ”って…ああ、怒気ね。怒気の方ね。おぅけい。 なんとか気持ちを落ち着かせようとするが、俺はその一瞬の“ドキッ”を眼鏡に対してしてしまった事を後になって後悔する。 なぜならこいつは―― 「じゃあ今日はしようか?」 手にローターらしき卑猥な道具を俺に見せながらにやにやする、くそ変態眼鏡だったからだ。

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