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第26話「我慢できる?」
待て待て待て待て、ちょっと待て‼︎
この状況は、本当にまずいんじゃねえのか⁉︎
「新 、そんな暴れないでよ」
全身を眼鏡に押さえつけられて逃げる術がない。
「てめっ、離れろ馬鹿っ」
今まで、どんなに体格差があってもケンカで負けた事なんてなかった。眼鏡とだって、負けるはずないと思ってたんだ。
なのに……いくら力を入れても、体格も力も、眼鏡には敵わない。
そんな奴に、抵抗なんてして意味があるのか?
いや、抵抗するしかない‼︎ 何がなんでもっ‼︎
これ以上俺に変な事しやがったらまじで本当に殺してやる‼︎
「なっ…お、おい、これなんだよ?」
「ん? お前のネクタイだけど?」
ほんと、いつの間にだよってツッコミたくなるほど一瞬でネクタイを外された。
「で、何してんだよ…」
「暴れるから、手、縛ろうと思って」
これまたいつの間にだよって言いたくなったが、どす黒い眼鏡のにこにこ顔を見たらそんな気も失せてしまった。
そんな眼鏡に引いていると、何を勘違いしたのか
「俺に縛られんの、好きだろ?」
とか言いやがった。
好きなわけねぇだろが‼︎
どんな勘違いなんだよやめろ‼︎
「ざけんな‼︎ ほどけくそっ」
やばい。
また、こいつのペースに飲まれる。
「新」
何度も名前を呼ぶその声が、頭の奥深くまで届いて
「っ……」
変な錯覚を起こしてしまう前に
「すげえ気持ち良くしてやるから」
こいつから離れなければならない
「あっ」
眼鏡の吐息が首筋に触れ、体が疼いたその時だった。
【ピンポンパンポーン〜♪】
『2年A組 上城 成海 さん、理事長がお呼びです。至急、理事長室に起こし下さい。 繰り返します。2年……』
眼鏡を呼び出す放送が流れた。
「………ちっ」
分かりやすく舌打ちをして機嫌を損ねる眼鏡。
そんな眼鏡をよそに俺はというともちろん…
「………な」
(ナイス‼︎ 理事長っ‼︎‼︎)
死ぬほど喜んだ。
「理事長かよ…」
やっと俺から体を離した眼鏡。心なしか、生徒会室のスピーカーを睨んでいるようだった。
今日はなんてナイスなタイミングで救いの手が降りてくるんだろう。
会長にしろ、理事長にしろ…まさに救世主‼︎‼︎
眼鏡の俺に対する嫌がらせがとことん阻止され、俺の中に余裕が生まれる。
「はっ、呼ばれてるぜ? 副会長さんよ」
さっさと行け。こんなふざけた茶番からこの俺を解放しやがれ‼︎
なんて、余裕をかましていると
「ちょうどいい」
そう呟き、眼鏡がにやりと笑ったのを俺は見逃さなかった。
眼鏡の手にはあの卑猥な道具。
「なぁ新」
あれ、ちょっと待てよ。
眼鏡のこの顔…
「俺がここに戻ってくるまで」
これはもしかして…
「いい子で“待て”、できるよな?」
逆にやばいんじゃないのか?
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