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第30話「君はもう」

予定よりも早く放課後の用事を終え、生徒会室に足を運んだ。 まだ片付けてない書類もあるし、すべてを成海(なるみ)に任せるわけにもいかない。 少しの空いた時間さえも、僕は学校貢献の為に尽くしたい。 それに最近の成海は前よりも作業に遅れが出ている気がする。 今朝の1年君の影響かな? いい意味で変わるなら何も文句はないけれど、今回は悪い方向に影響が出てしまっている気がする。 あの1年君が成海にとって悪影響だと判断すれば、生徒会への推薦も考え直さなければ。 そんな事を考えながら生徒会室の前にたどり着いた。 「鍵が開いてる……」 もちろん、成海がいるのだと思い、扉を開けたが、中には誰もいない様子だった。 けれど、部屋を見渡した時、奥の方でわずかに物音がして、近づくと、会長机の下にいたのはあの1年君だった。 机の脚に両手を縛りつけられ、下半身は露出している状態。 なんとも淫らな姿だった。 見た時は流石に驚いた。でも、すぐに成海の仕業だと気づく。 1年君の性器を縛り上げているのは成海のネクタイ。 僕が生徒会室に来る事を予想していなかったのか、1年君の表情からは絶望が見て取れた。 状況把握がまだ出来ないけど、見るからにつらそうなのは分かる。 1年君の頬にそっと触れると体はガチガチに震えていた。 首元にはキスマーク。きっと成海がつけたんだろう。 独占欲と執着心の表れ―― 正直言って、成海がここまでするとは思っていなかった。 “今回のはちょっと違うんだよな” 今朝の成海が呟いた言葉は、どんな意味を示すのだろう。 あの他人に無関心だった成海がここまでするなんて。 「渋谷(しぶや)君」 一度執着心を覚えたら、きっとそれは中々切り離せない感情を生んでしまうだろうね。 でも、駄目だよ成海。 僕は君が間違った道に落ちる前に、僕が正してあげるよ。 「僕と付き合おうか」 だから、君はもう成海と一緒にいない方がいい。

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