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第2話
何度こうして彼と肌を重ねただろう…。
甲斐は伊達会といういわゆる広域指定暴力団に属していた。暴力団の組織としてもかなり大きなもので、甲斐はその中でも直系の若頭という組長の側近に近い立場だった。俺、赤羽はその下部組織の竜動組の舎弟。末端も末端、といったところだった。
甲斐の部屋に呼ばれるようになり、ある日、唐突にベッドへと誘われた。
はじめは何のことだか分からなかったけれど、彼は赤羽に乗っかるとその衣服を乱し、赤羽のことを誘った。
唐突に始まり、終わった初めての二人のセックスだった。
それからもこの部屋にやってくると定期的にセックスをするようになった。
お互いにその理由は聞かない。
赤羽は「なんで?」と聞いてみたい気持ちがこみあげていたが、それを聞いてしまったら今の関係が終わってしまうような気がしていた。
これが今の二人の距離だった。
ぐっと手を押しつけるように口づけをさらに深くした。痕が残ってしまうかもしれないけれど、その手を赤羽は緩めることはしなかった。
「あっ…はぁんっ」
そうすればそうするほど甲斐からは甘い声が漏れた。
彼と身体を重ねてだんだんと彼の好みが分かってきた。
ちょっと、いや、自分が思うよりもかなりひどくされるのが好きなようだった。
このときは赤羽が主導権を握る。敬語など苦手だったがこのときはさらにつかうことなどなかった。
彼の唇を舌でなぞったとき、少し歯をたてた。
赤羽は本当は優しく抱きたかったし、今は目上の相手となる人にするようなことではないと思いながらも彼が望むのならと思い、赤羽はそうやった。
長く長く濃厚な口づけ。スーツのボタンを外し、ワイシャツのボタンを外し…着込まれた彼の衣服を取り去っていくのはなかなか難解な作業であったが、それもだんだんと慣れつつあった。彼の高級なスーツを汚すわけにはいかなかった。彼の着衣が剥がれていくのと同時に自分の身も剥いでいく。
彼はその間、俺の髪をゆっくりと撫でる。どんな時でも外さない黒い手袋を自ら外し、俺の髪を辿る。指通りの良いサラサラとした彼の髪と違い、毛質が硬く指通りの悪い自分の髪がそんなに好きではなかったが、彼が飽きずにその指で、素手で何度も撫でるので悪い気はしなかった。むしろこの瞬間だけ、自分が彼にとって特別な存在になれたような気がするのだ。
そして、きっちりと着込まれた甲斐のスーツを乱していくのは、赤羽にとってなんだか高揚するものがあった。
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