蛇さんはオッサンいやこれで意外に女性という線も捨てがたい？　オジサンとオバサンって見分けがつかないよね。 　蛇さんは若作りすごいけど。 　ゆったりした服を着ててなで肩で全体的に線が細いから性別が断定できない。 　 　組織の人間は性別と年齢が不詳な人が多すぎる。 　不老の秘薬でも飲んでるのかもしれない。 　なんかそういうレシピを見たことがある。 　というか、本当に不老不死になるのか誰かが研究していたはず。 　世界に散らばる民話や伝承を集めて片っ端から試すの会。金持ちの道楽、昔流行ったらしい徳川の埋蔵金探しとか。人はいつでもロマンを追い求めるもの。 　もしかしたら王道学園というものもそのロマンの追求の一つなのかもしれない。 　誰か一人が望んだのではなくそれぞれが少しずつ「こうなったら面白いんじゃないのか」という気持ちで動いたことによって現実は物語そのものの動きになる。 　 「生徒会役員の恋人枠が埋まってるから……」 「風紀委員と図書委員と保険委員と美化委員あたりが標的になる……かも？」 「会長を略奪愛される展開は何割ですか？」 「わんわんを片時も離そうとしないレベルの会長を寝取ろうとする気合のあるやつは逆にどこでもやってける立派な子だと思うのよ」 「片思いからの～？」 　首を傾げてみるが苦笑いを返される。 「無理だと断言はしないけど……うーん、わんわんが他に尻尾振ってるのを見たら自分に嫉妬させるために転入生にちょっかい出すってこともあるかも。いやヤンデレ監禁フラグなだけかな？」 「まあ他に手を出したら嫉妬せずにそのまま離れますけどね」 「だよね。わんわんと会長の距離感なんてそんなもんだよね。それが分からないようなおバカさんにはわんわんは渡せないしねぇ」 　 　蛇さんは結構真剣に別れるためのシナリオを考えてくれているけれどいい案は出てこない。 　 「そーいや、わんわんは会長のどこがイヤ？　面倒くさがり無気力系で流されとくわんわんがこんなイヤがるポイントって何？　何されたの？　玉ねぎ？？」 　 　オレの身体は人間なので玉ねぎで死んだりしません。オレの意見をガン無視してるところは普通に問題だと思うけど、あえて言うと――。 　 「オレのことかわいいとか言ってくるところ」 　 　何をしてても口を開けば「かわいいかわいい」言い続けるアイツは目が節穴だ。かわいいわけがないだろ。同じぐらいの背丈で非常時における運動神経はオレの方がいい。 　ただスイッチが入ってないとマウントポジションを簡単に取られたりするけど決して非力じゃない。かわいくない。わんわんを猫可愛がりするのは邪道だろ。オレは絶対に認めない。 　 「価値観の違いだって割り切ろうにも気持ち悪い」 「かわいいって言うの禁止って約束してみるとか」 「その言い分がかわいいって速攻で言われた」 「俺様じゃなくてウザキャラかぁ」 　 　蛇さんは唸りながらオレにくれたはずのチョコレートを食べた。酷い。オレにくれたくせに。恨めしい気持ちが顔に出てたのか「わんわん、犬ってチョコ食べると死んじゃうんだよ」って真剣な顔で言われた。知ってる。 　オレはわんわんだけど肉体は人間なのでチョコレートは普通に食べられる。誤魔化されたりしない。もう子供じゃない。 　 　バレンタインデーに神様がくれたチョコを幹部たちがオレに残さずに食べたのをオレはまだ覚えている。絶対に許さない。 　神様が毎年バレンタインデーに何かしら作ってくれていたなんて知らなかった。 　クリスマスプレゼントとか。 　時期を外して預かってたって渡されたりしたけど許さない。 　ちなみに飼い主はその辺しっかりしてる。 　ダメなのはというか子供であるオレ相手に意地悪してくる神様の周りや幹部の一部がダメダメだ。わんわん以下の奴だと哀れんでおく。許さないけど。