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11 そんなことより、ギブ・ミー・チョコレート!

 そういえばオレは会長からクリスマスプレゼントもバレンタインデーのチョコも貰ったけどお返しもホワイトデーも何もしてない。今更過ぎるけど会長から何かを催促された覚えがない。あえて言えば最初の付き合って欲しいっていうアレだけ。   「生徒会長って……健気ってやつ?」 「見返りを求めないのが本当の愛っていう考え方の人っているねぇ。ウザぇ」    蛇さんは嫌な事でも思い出したのかオレのチョコレートをバクバク食べだす。  自分で食べちゃうならオレにくれなければいいのに。  上に持ちあげて「はい、あげた~」みたいな嫌がらせをされた気分になる。  オレのチョコレート。  三つぐらいしか食べてないオレのチョコレート。   「片思いで相手拘束とかマジキモいし。自分だけ好きでいいと思ってんなら一人上手で自家発電にいそしんでればよくない?」 「唐突に柄が悪いですね……」    トラウマスイッチでも入ったのか、蛇さん。酒が入ったわけでもないのに絡んでくる、絡んでくる。人の恋愛に野次馬根性で乗り込むことはあっても自分のことは絶対に口にしない蛇さんの暴露。とくに聞きたくない。   「別れさせ屋でも結成してあげようか?」    昔、飼い主も含めて蛇さんたちがそういうことをしていたというのは聞いたことがある。   「王道転校生とかいう美人局に対抗するには別れさせ屋の技術も必要になってくる……かもです?」 「ですです。男は胃袋からオトせ。つまり毒殺でGO」  蛇さんのテンションには着いていけない。なに言ってんのかサッパリだよ。会長を毒殺したって何の解決にもならない。  いや、それでいいのか?   「生徒会役員の総入れ替えってどうなんですかね?」 「リコール展開はもはや王道。アンチ王道の中での王道。一人だけ仕事をして倒れる会長、または書記、あるいは会計、それか副会長。それとも庶務や補佐の脇役主人公!!」 「生徒会役員の誰か一人が他に助けも求めず自分だけで仕事をした挙句に倒れるってリコールされてもしかたないじゃないですか」 「共に生徒会としてやってきた仲間だから信じて待ってたわけよ?」  よく分からない。  絆があったら裏切られるはずがない。  裏切られた、捨てられたってことは相手にとって自分はその程度の存在でしかなかったってことだ。  悲劇的な自分に酔いたかった自傷趣味なのか。  傷口を見ないでいれば、怪我がなかったことになるとでも思ってる子供みたいだ。  意識しなければ急に腕が切断されても痛みはすぐに来ないという。  逆に視界や音で衝撃があると怪我がなくても痛みを感じる。  音と光だけの爆弾で身体が動けなくなるような現象の逆。目を閉じていれば歩き続けられるという錯覚。自分についた嘘はやがて自分自身の首を絞めることになるだけ。   「わんわんには理解できないだろうねぇ。後ろから撃ってくる前にちゃんと対処するんだから」 「普通です」 「根深い人間不信があるわぁ。わんわんは生きてることが奇跡だから仕方がないね」    なんて言われて頭を撫でられた。  そんなことより、ギブ・ミー・チョコレート!

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